PR

ニュース コラム

【論壇時評】12月号 「液状化」社会 米国と日本 文化部・磨井慎吾

米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の勝利宣言を伝える東京・新宿の大型ビジョン =8日午前
米大統領選で民主党のバイデン前副大統領の勝利宣言を伝える東京・新宿の大型ビジョン =8日午前

 今月上旬に投開票が行われた米大統領選では民主党のバイデン前副大統領の当選が確実となり、共和党の現職トランプ大統領の在任はひとまず1期で終わる見通しとなった。

 だが4年前に大番狂わせのトランプ氏当選を生んだ要因として挙げられる米国内の党派対立や格差拡大、自国第一主義の台頭などの諸問題は近い将来に解決する見込みがなく、「トランプ時代」とでも呼ぶべきパラダイム自体は中心人物が去った後も続くことが予想される。この数年、超大国を目指す中国の挑戦を受けつつもなお巨大な政治経済的な存在感とは別に、国際社会における理念的、文化的な面での米国の求心力が陰りを見せている点も見逃せない。その動静が国際社会に大きな影響を及ぼす「唯一の超大国」で生じている政治的地殻変動については、日本の論壇も無関心ではいられないだろう。

 年2回刊のアステイオン93号の特集「新しい『アメリカの世紀』?」は、そのような問題意識に基づき射程の長い論考を多く集めている。その中で、著書『リベラル再生宣言』(早川書房)などで日本でも知られる米政治哲学者、マーク・リラの「液状化社会」は、前回選挙でのトランプ氏当選に大きな役割を果たしたとみられる有権者層について、社会の「液状化」に拒否感を持つ人々と位置づける。

 このグループは、経済的には規制緩和やグローバリズムを推進しながら社会面では保守主義を掲げる共和党(新自由主義的保守主義)と、その逆で伝統的価値観を批判して個人の自己決定や多文化主義を重んじる姿勢を取りつつも経済的規制や福祉の強化を志向する民主党(進歩主義的コスモポリタニズム)のどちらにも十分納得がいかない。そして冷戦後の欧米社会全体の潮流としては、経済と社会の両面で従来の固定的制度を破壊する「液状化」が進行し続けているのだが、それをイデオロギー的に歓迎するリバタリアニズム的な立場(新自由主義的コスモポリタニズム)を取れる人間はごく少数である。

続きを読む

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ