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【主張】バッハ会長来日 国立競技場に聖火灯そう

 ■「観客あり」前提の議論加速を

 新型コロナウイルス禍で延期された東京五輪・パラリンピックの開催に懐疑的な意見が、国内にはまだ多い。

 しかし、3万人超の観客を入れたプロ野球が行われ、米中露3カ国の選手らを東京に招いた体操の国際大会も成功した。

 厳格な感染防止策を取れば、観客を入れての五輪開催は決して夢物語ではない。むしろ、可能性すら否定する声が、われわれをコロナ禍の出口から遠ざけている。そのことに気づくべきだ。

 ≪安全の確保を最優先に≫

 菅義偉首相と来日中のバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長が、東京五輪・パラリンピックの開催に向けて、緊密に連携することで合意した。

 菅首相は「人類がウイルスに打ち勝った証しとして開催する」と述べ、バッハ氏は「安全な大会になるという環境を担保する」と歩調を合わせた。開催への強い決意を、政府とIOCのトップが表明したことは大きな前進だ。

 バッハ氏は、観客数の上限を緩和したプロ野球の実証実験などを引き合いに、東京五輪で「スタジアムに観客を入れることにも確信を持てた」と述べた。開発が進むワクチンの確保に意欲を示し、選手らに接種した上での五輪参加を呼び掛けもした。

 特筆すべきは、接種にかかる費用をIOCが負担すると明言したことだ。これまでのIOCは、大会の延期に伴い数千億円と見積もられる費用分担に、及び腰の姿勢が目についた。ワクチンの費用負担は、痛みを背負ってでも五輪を開催するという前傾姿勢の表れとして評価したい。

 世界の感染状況が楽観を許さないことに変わりはない。欧州では国際競技大会が相次ぎ中止を余儀なくされ、日本でも感染の「第3波」が広がっている。

 感染リスクを最小限に抑えるためにも、今はその具体策の検討をさらに深めなければならない。バッハ氏が「安全がわれわれのトッププライオリティーだ」と述べたように、選手や大会関係者、観客の安全確保が最優先である。

 大会組織委員会は観客数の上限について結論を来春に先送りした。日々変化する情勢を慎重に見極めながらも、「観客あり」での開催へ議論を進めてほしい。

 観客には感染予防の徹底を義務付け、悪質な違反者の閉め出しもためらってはならない。あらゆる安全確保策を取ってこそ、東京五輪が掲げる「安心、安全」への信頼度も高まるはずだ。

 日本が抱えるもう一つの課題は盛り上がらない世論だ。コロナ感染が広がる中、バッハ氏が来日したのは、五輪開催に前向きな声を喚起する意味もあろう。

 同じ危機感は、日本のアスリートも共有している。

 体操の国際大会の閉会式で、内村航平は「国民のみなさんには『東京五輪は開催できないのではないか』ではなく、どうやったらできるか、どうにかできるように考えを変えてほしい」と呼びかけた。全く同感である。

 五輪の有無にかかわらず、コロナ禍の収束に向けて国民が努力を求められることに変わりはない。後退した社会・経済活動を一日も早く回復軌道に乗せなければならない。その先に、東京五輪の開催も見えてくるからだ。

 ≪経済を立て直す試みだ≫

 内村の発言には批判も寄せられたというが、筋違いだろう。組織委も、日本のスポーツ界も、内村を決して孤立させてはならない。コロナ禍という向かい風の中で東京五輪開催への強い意志を、もっと発信してほしい。

 バッハ氏は「日本の方々の規律正しい姿が、違いを生んでいる」とも述べた。欧米より感染者数の拡大を抑えている日本国民への賛辞である。国内で聞こえる五輪批判は、感染予防の努力を自ら否定してはいないだろうか。

 開催国として、後ろ向きな議論にそろそろ終止符を打つときだろう。「五輪の聖火がトンネルの先の明かりになる」(バッハ氏)の言葉に、われわれの希望も重ねてみたい。

 五輪を開けない理由ではなく、開催できる方策を探す。そのための努力は、コロナ禍で傷ついた社会、経済を立て直す試みと何一つ背反しないはずだ。

 「トンネルの先の明かり」を信じ、今度こそ、国立競技場にその火を灯(とも)さなければならない。

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