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【風を読む】山あいの「戦争博物館」その後 論説副委員長・佐々木類

 今年9月、栃木県那須町にある戦争博物館をこの欄で紹介した。戦前、航空兵を教育するために訓練で使われた練習機「赤トンボ」などが展示してある民間運営の珍しい施設だ。

 この博物館の前館長が昨春他界するなどして運営がピンチに陥り、寄付金に期待を寄せていることに触れた。するとこれまでに集まった浄財は、約100人から200万円を超えた。中には1人で100万円を超える額を寄付してくれた人もいたという。

 貴重な史料を後世に残したいと思って活字にしただけに、何ともありがたいことだと思う。

 本里福治館長(75)に寄付金の使い道を聞いた。本里さんは、「寄付してくれた方には心より感謝申し上げたい。まずは、前館長の栗林白岳さんが生前行っていた軍歌祭の様子などを収録した50ページのパンフレットを1万部作製する。より多くの人に博物館の存在を知ってもらいたい」と語る。

 施設は山あいの斜面にあり、雨水による浸水は当たり前で、屋根もさびて雨漏りすることもあるという。この古くなった施設の補修にはかなりの額が必要になる。このため、少しでも多くの運営資金を得るために、インターネット上で活動資金を集めるクラウドファンディング(CF)を始めるそうだ。CFは、アイデアやプロジェクトを持つ起案者がサイトを通じて世の中に呼びかけ、共感した人からインターネットを使って少額からでも資金提供を呼びかけられる仕組みだ。

 施設の補修に追われる一方で、博物館ならではの発見もある。展示物の中にある古びたエンジンが実は、旧日本陸軍の二式複座戦闘機「屠龍(とりゅう)」のエンジンであることが専門家の鑑定でこのほど判明したという。終戦間際、占領軍に接収されるのを恐れて海に投棄したとみられるものだ。屠龍は少なくとも米国の国立航空宇宙博物館に胴体の一部が展示されているのと、茨城県ひたちなか市にエンジンとプロペラが保存されているのが確認されている。

 元海上自衛隊員の本里さんは、「今のままでは後世に史料を残すという義務を果たせていない。英霊に感謝の気持ちを表したいという栗林さんの遺志を継ぐためにも、博物館をきちんと整備していきたい」と話す。

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