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【一筆多論】ヤルタ密約「引き渡し」論議を 岡部伸

 プーチン露大統領が菅義偉首相に対し、北方領土交渉の基礎として改めて提案したのが1956年の日ソ共同宣言だ。

 日ソ共同宣言は「平和条約締結後にソ連は歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡す」と記しているが、プーチン氏は、「引き渡す根拠や、どちらの主権になるかは明記されていない」と解釈し、歯舞と色丹の2島返還を素直に履行する意思を示していない。

 では、「第二次大戦の結果、ロシア領になった」とロシアが千島列島内の北方四島(クリール諸島)領有を合法化する根拠と主張するヤルタ協定の第3項の「クリール諸島がソビエト連邦に引き渡される」(ロシア語で「ペレダーチャ」)はどう説明するのだろう。

 第二次大戦末期の45年2月、クリミア半島、ヤルタでルーズベルト米大統領、ソ連のスターリン首相、チャーチル英首相がドイツの分割統治やポーランド、バルト三国の戦後処理、国際連合設立などを決めた。そのなかに対日参戦の見返りとして、ソ連に南樺太返還、千島列島の引き渡しなどの権益を与える「ヤルタ密約(極東条項)」も結ばれた。

 ソ連はヤルタ密約に基づき同年8月9日、日ソ中立条約を破って侵攻し、北方四島を占拠し続けている。

 ヤルタ密約は、連合国の首脳が交わしたものにすぎず、当事国の日本が関与しない領土移転は国際法に反している。日本政府は北方領土の領有権はヤルタ密約に拘束されないと主張、戦後の米国は日本を支持し、ソ連の法的根拠を認めない姿勢を示してきた。

 米上院が51年にサンフランシスコ平和条約を批准する際、ヤルタ密約を含めないと決議し、53年に共和党のアイゼンハワー大統領は年頭教書演説で「あらゆる秘密協定は破棄する」と宣言。56年には「ヤルタ協定はルーズベルト個人の文書で、米政府の公式文書でなく無効」との国務省声明を発表、ソ連の領土占有に法的根拠を認めない立場を鮮明にした。

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