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【朝晴れエッセー】おばさまとの4年間・11月12日

 今から30年以上も前のこと。山口から東京に出てきた私は、当時でも珍しかった賄(まかな)い付きの下宿を大学の学生課から紹介された。両親と一緒にそのお家を初めて訪ねたときのことは、今でも鮮明に覚えている。

 「よくお嬢さんを一人で東京に出される決心をなさいましたね」とおばさま(大家さんをそう呼んでいた)は、開口一番おっしゃった。

 お年をめしていらっしゃったが、にじみ出る気品と温かさがステキだった。父が、何を思ったか「何年(なにどし)ですか?」といきなりぶしつけな質問を…。しかし、おばさまは「象年です」とユーモアで返され、面接はつつがなく終わり、私が責任を持ってお嬢さまをお預かりしますと、相成った。

 2階の子供部屋に学生が3人。食事もお風呂もテレビを見るのも、すべておばさまと一緒。まさにひとつ屋根の下の4人家族。

 おばさまお手製のポークのプラム添え、舌平目のムニエルなど、それまで食べたことのないシャレた料理が毎日、食卓に所狭しと並んだ。手作りの梅酒で作った飲み物は貴重品で、ちょっぴり大人の味がした。

 「食事のときは、黙って食べるのではなく、適当なお話をしながらね」と、上級編の作法もさりげなく教えてくださった。

 おばさま、夢のような4年間をありがとう。最初の約束通り、いえ、それ以上によくしていただきました。

 料理音痴(おんち)の私は、おばさまの愛情料理を受け継げなかったけれど、シアワセな思い出は年を経るごとに「熟成」し、味わいを増していきます。

田中久美子 55 東京都足立区

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