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【朝晴れエッセー】「気ぃつけてけょ」・11月10日

 「気ぃつけてけょ」

 祖母はあまりしゃべる人ではなかったが、家の誰かが出かけるときは必ずこう言って見送った。

 大人になりきれていなかった私にとって、気にもとめない言葉だったが、なぜだか体のどこかが温かくなる、そんな気がしていた。

 23年前、祖母は祖父をそう言って見送り、1年後、誰にもそう言われることなく祖母は旅立った。

 それから数年たち、私は結婚した。朝、夫が出勤するとき、思わず出たのが、

 「気をつけて行くんで」

 そして子供が生まれ、小学1年生になり、初めて1人で登校する日、夫に最初にかけたときよりもっと思いを込めて、

 「気をつけて行くんで」

 と言っていた。その言葉を聞いて笑顔で出かける夫と娘。その言葉をかけて、(今日も大丈夫。無事帰ってくる)と心の中で安心する私。

 修学旅行、出張、試験…ちょっぴりいつもと違うお出かけのとき、私はよりいっそう「気をつけて行くんで」に気持ちを込める。

 なぜなのか。

 「気ぃつけてけょ」

 と祖母が見送ってくれたときは、誰もが無事に帰ってきていた。その言葉が、無口な祖母の精いっぱいの愛情だった、と気付いたからだ。

大住桃子 47 茨城県つくば市

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