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ニュース コラム

【記者発】コロナワクチンの製造ラインを見た 大阪総局 安田奈緒美

 「ご安全に」。口々に言い合って、資材や工具を手に、150人近い人たちがせわしなく立ち働いていた。

 岐阜県池田町、揖斐(いび)川と山々に囲まれるようにして世界最大級の細胞培養装置を備える日本のバイオ医薬品製造会社「UNIGEN」(ユニジェン)の工場はあった。新型コロナウイルスワクチンの研究開発を進める塩野義製薬から生産を受託し、製造ラインを増やす工事を進めている。その工事現場は熱気に包まれていた。

 日本は世界のワクチン競争に後れをとっているものの、塩野義は来年末までに3千万人分以上のワクチンを生産できる設備を整える。また、今年12月にも人を対象にした治験(臨床試験)を始める。近い将来、ここから国産ワクチンが供給されるだろう。

 正直、春先はこんなスピード感で、ワクチン製造ラインが準備されるとは想像していなかった。ワクチン開発は実用化までのハードルが高いからだ。承認までのプロセスに膨大な費用と時間がかかり、10年は当たり前。「宝くじにあたるより難しい」と言われる病気の治療薬の開発と比べても、健康な人に投与するワクチンは安全性の検証が欠かせない。実際、世界で先行する英アストラゼネカや米ジョンソン・エンド・ジョンソンでも、副作用のおそれから治験が一時中断された。

 また、実用化の約束ができない開発と並行して製造ラインを用意することはビジネス上、無謀といえる。それでも未曽有の危機を前に国内メーカー各社は工場への投資を急いだ。海外ワクチンに頼りすぎる危険性から国産ワクチンを重視する厚生労働省が、塩野義や武田薬品工業など6社に生産体制を強化するために900億円の助成を決めたことも各社の動きを加速させた。

 ユニジェンの工場で、ワクチン製造に控える大型培養装置を見せてもらった。フロア2階分を突き抜けるような巨大タンク。製薬用装置はこれまで海外製も多かったが、このタンクの製造元は日本のメーカーだった。装置メーカーも頑張っている。

 ワクチン開発では周回遅れと指摘されている日本だが、国がワクチンに対する長期的な政策を持ち、そこに民間の技術が呼応すれば、必ず挽回の萌芽(ほうが)が見える。

【プロフィル】安田奈緒美

 平成11年入社。大阪文化部でクラシック音楽、大阪経済部で製薬、機械、財界などを担当。現在、大阪総局で関西広域面を担当している。

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