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【一筆多論】いつ生きる「ドイツの経験」 長戸雅子

1990年10月3日、ベルリン中心部のブランデンブルク門に集まり、ドイツ統一を祝う人々(DPA=共同)
1990年10月3日、ベルリン中心部のブランデンブルク門に集まり、ドイツ統一を祝う人々(DPA=共同)

 「何もありません」

 このあまりにそっけないひと言は、残念ながら、その通りだったのだと年を経るたびに思う。

 1989年11月のベルリンの壁崩壊に伴い、翌年消滅した東ドイツの最後の外相、マークス・メッケル氏に「ドイツの経験から南北朝鮮の統一に向けたヒントやアドバイス」を聞いたときの答えだ。2010年、ドイツ外務省が企画した再統一20年記念のプレスツアーでのひとこまだった。

 韓国の李明博政権が南北統一に向けた費用を賄う財源として「統一税」を打ち出し、韓国では「ドイツの経験」に関心が高まっていた。目を輝かせて質問した韓国の記者は冒頭の回答に絶句していた。メッケル氏いわく「ドイツと朝鮮半島では状況が違いすぎる」。

 メッケル氏が示唆した違いのひとつは地政学的状況だ。社会主義の盟主、ソ連は当時弱体化していた。ハンガリーやポーランドで起きていた民主化の動きとともに、統一が止められない流れだと早い段階から理解していたゴルバチョフ共産党書記長は「(現実に)後れをとる者は現実に罰せられる」と統一を阻止しなかった。一方、北朝鮮の後ろ盾である中国は、この10年余の間に世界第2位の経済大国となり、経済・軍事力を盾に地域への「覇権」を一層強めている。

 何よりの違いは統一への機運だ。ひとつの国家になりたい-。「民衆の力が世界を動かした」(メッケル氏)のに対し、半島にこうした熱気はあるだろうか。

 壁崩壊から再統一に至る過程を留学生としてドイツでつぶさに観察した韓国人がいる。帰国後、韓国政府のシンクタンク、統一院の院長も務めた孫基雄(ソン・ギウン)氏だ。

 孫氏も「自由や民主主義、繁栄が保障された形での統一には、半島の全住民が主役になる必要がある」と強調する。

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