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【朝晴れエッセー】おばあちゃんの畑・11月3日

 「コン、コロロロ…」

 農作業用エプロンのポケットからこぼれ落ちて、床に転がったのは、小さなガラスのおはじき1つ。赤い模様が透けている。

 週末、大根の間引きをしていて、畑の土の中から見つけたものだ。土をはたいてポケットに入れたまま、すっかり忘れていた。

 嫁いでいった長女のものか、県外で就職した次女のものか、はたまた大学生の三女のものか…? いずれにしても、その3人のうちの誰かが落としていったものだろう。

 きれいに洗って丁寧に拭き、そっと日光にかざして見る。ガラスに刻まれた格子模様の向こうに、幼かった子供たちのキラキラした笑顔が浮かぶ。無邪気な笑い声が聞こえてくる。

 あの頃、勤めに出ていた私の代わりに、子供たちの面倒を見てくれていた義母。いつも畑仕事の傍らで、子供たちを遊ばせていた。小学校に上がると、学校から帰ってくる子供たちが目につくように、畑に出て仕事をしながら待っていてくれた。

 子供たちは、そんなおばあちゃんの姿に安心して、毎日学校に通い、中学校、高校と進んでいったのだ。

 退職した私は、足腰が弱くなった義母から畑の大半を引き継いだ。これから、この譲り受けた畑を、豊かな土を大切に育てていこう。

 いつか私にも孫が生まれて、「おばあちゃああん」と、この畑の中を駆けてくる日を夢に見ながら。

山西啓子 54 和歌山県印南町

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