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【朝晴れエッセー】「とんがり帽子」・11月1日

 昭和22年7月、小学4年生の頃、「鐘の鳴る丘」のラジオ放送が始まった。当時、ラジオを持っている家は少なかった。しかし、ドラマの主題歌「とんがり帽子」は、子供たちの間ではやっていた。

 だが、歌詞の最初の部分は口ずさんでも、2番、3番となるとほとんどの人が歌えなかった。

 どうしてもこの歌の全部が知りたかった。そこで考えた。毎日のラジオ放送を聞きながら、1行ずつ帳面に歌詞を書き留めることにしたのだ。

 やっと最後まで書き留めた翌日、恐る恐る「『鐘の鳴る丘』の文句(歌詞)がわかりました」と担任に名乗り出た。

 日頃、教室で目立たない私が言い出したことに担任は驚き、「よし。黒板に書いてみろ」。

 生まれて初めて黒板に白墨で書いた文字は、うすくて平仮名ばかりだった。だが何となくうれしかった。板書をする私の後ろには、友達が黒板の文字を読んでいる。少しずつ書いていくにつれ、小さな歌声が聞こえてきた。

 ふるえる文字を書いたあの日から十数年後、黒板に白墨で文字を書く仕事、教師になった。それから定年まで白墨を持ち続けた。

 先日、朝ドラ「エール」の放送で「鐘の鳴る丘」の主題歌が放送されたとき、私は一瞬にして昔に戻り、ドラマの子供たちと一緒に大きな声で歌った。過ぎた日の文字を思い出しながら…。

金山輝代(82) 福岡県直方市

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