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【朝晴れエッセー】お守り・10月28日

 昨年の秋のある日、私は小さな演奏会のお手伝いをした。受付と、フィナーレでのUさんへの花束贈呈である。

 慣れないお役を終えて胸をなで下ろしていたところに、ねぎらいの言葉とともにご本人からさりげなく渡されたものがある。

 純白のポチ袋だ。几帳面(きちょうめん)な字で、「寸志」としてUさんの名が書いてある。

 Uさんは、かつての職場の大先輩。思いもかけないことに一瞬はひるんだが、素直にいただいた。

 中にはきれいな千円札が2枚、少し斜めにずらして四つ折りにたたまれている。昔の人は、お札を渡す際には、わざわざこのような折り方をしたものだ。

 さて、このうれしいお小遣いをどう使おう。

 んッ? 最後にこうしてお小遣いをもらったのは、いつだったろう。

 そうか…社会人となって働きだしてからこの方、私はせっせと渡す役回りばかりしてきたもんなぁ。今は小学生の孫にお年玉をあげるおばあちゃんだ。

 遠い昔、私にお小遣いをくれた祖母や両親、親戚のおじさんおばさん。懐かしい人たちが、ふと楽屋の片隅に舞い降りてきたような気がした。

 あれから1年。今日もお財布を開けては、いまだに手のつけられない小さな袋を確認する。

 そしてほっと安堵(あんど)する。大勢の大人たちに守られていた「末っ子の甘えん坊」。まるであの頃の自分のようだ。

 脇田茂子 74 東京都世田谷区

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