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【新聞に喝!】中国の「民族抹殺」に協力する日本メディア 元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦

監視カメラが設置された新疆ウイグル自治区ホータン市=2017年7月(明治大現代中国研究所提供、共同)
監視カメラが設置された新疆ウイグル自治区ホータン市=2017年7月(明治大現代中国研究所提供、共同)

 女子テニスの大坂なおみ選手の全米オープンの行動で、日本でもアメリカの人種差別問題が注目されている。だが、それよりはるかに重大な問題として、中国の民族問題が存在することは、驚くほど軽視されている。差別問題を超越した、極めて深刻な民族抑圧・民族弾圧問題であるにもかかわらず。

 しかも単なる人権侵害問題ではなく、9月29日の産経新聞(1、2面)で報じられているように、基本的に「少数民族」の「漢族」への同化政策である。チベットでは移住や職業訓練が強制され、ウイグルでは多大な強制収容所が存在する。内蒙古では、モンゴル語の教育の廃止が断行されているが、民族の基盤は言語であるから、言葉を奪うことは、民族そのものを抹殺することに他ならない。

 そもそも中国では、民族の独立を許さない理屈・論理を作り上げている。それが中華民族主義のイデオロギーである。中華民族主義とは、中国の56の個々の民族全てを統合して、「中華民族」であるとする。したがって個々の民族を、チベット族・ウイグル族のように、ことさらに「~族」と称する。そのために日本で中国人と言っている集団は、漢族と表現するわけである。この中華民族主義、特に非漢族の漢族への同化吸収の論理は、中国共産党が発明したものではない。すでに孫文が唱えているものであり、『三民主義』の中の「民族主義」に明確に述べられている。

 平成20年9月、日本で麻生太郎内閣が誕生した際、中山成彬(なりあき)氏が国土交通相に任命された。しかし中山氏は「失言3点セット」によって、直ちに辞任させられた。その失言の一つは、「日本は単一民族」国家であるというものだった。同様な事例は、それ以前に何人もあった。しかし中国は、中華民族として、単一民族国家であると、堂々と主張しているのである。この明白な事実に対して、中山氏を辞任に追い込んだ、日本の新聞を始めとしたメディアは、何の疑問も持たないらしい。

 つまり中国の「~族」や「少数民族」という表現は、極めて政治的な背景のある、究極の差別用語であり、中華民族主義のキーワードである。この問題については、『正論』10月号で楊海英氏が、『Hanada』11月号で石平氏が言及されている。私も本欄で2度ほど指摘したことがあるが、決定的に重要な事実にもかかわらず一向に理解されないので、繰り返し取り上げることにする。

【プロフィル】酒井信彦

 さかい・のぶひこ 昭和18年、川崎市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂(へんさん)所で『大日本史料』の編纂に従事。

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