【朝晴れエッセー】先生とアン・10月11日
メアリー、これが私のイングリッシュネームだった。今から46年前、高校2年生になったばかりの春に、当時担任になった女のK先生につけてもらった。
外国の女の子になったような不思議な感覚だった。先生は一人ずつ呼び出し、顔を見て第一印象で名前を決める。授業中はもちろん学校内では全員イングリッシュネームで呼ぶ。
それから先生はモンゴメリ作の『赤毛のアン』を全員に読むように半強制的に勧めた。私は本を読むのが好きだったので、何の抵抗もなく1巻から何巻までだったのかは記憶にないが、書店で買って読んだ。その頃その本は売り切れが続き、入庫待ちが常だった。
アンは孤児院で育ち、自身の赤毛とやせっぽちにコンプレックスがあったが、前向きで想像力があり森や川や道にまで独特の名前をつけた。
私は本の中の風景がまるで近くで見ているかのように想像できた。
現在、「アンという名の少女」というアンの物語がテレビで放送されている。当時想像していた風景や登場人物が、タイムスリップしたかのように映像を通してよみがえってくる。
今の歳になるまで心の片隅に眠っていた感情を呼び起こしてくれている。
先生は今どうされているだろう。お元気なら70歳くらいであろうか。先生のお人柄とアンとが重なるのである。
木津則子(62) 三重県伊賀市