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【ソロモンの頭巾】長辻象平 気候変動と台風 温暖化では進まぬ「強大多発」

今年9月5日、日本に接近中の台風10号。伊勢湾台風級への発達が警戒されたが、急速に勢力が衰えた(気象庁ホームページから)
今年9月5日、日本に接近中の台風10号。伊勢湾台風級への発達が警戒されたが、急速に勢力が衰えた(気象庁ホームページから)
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 日本にやって来る台風の強さや数が地球温暖化のせいで増している-という印象を多くの人が抱いているようだ。こうした思潮の中で「温暖化と台風の大型化は無関係」と主張すれば猛反発を買いかねない。

 だが、意外かもしれないが、事実は「無関係」に近いのだ。まずは論より証拠、台風の強さの変化について気象庁の記録を見てみよう。

大型は温暖化前

 気象庁のホームページには、上陸時の気圧が低い歴代トップ5を載せた「中心気圧が低い台風」の表がある。これを一瞥(いちべつ)すると驚くだろう。すべてが前世紀の台風なのだ。

 1961年の第二室戸台風(925ヘクトパスカル)を筆頭に2位は59年の伊勢湾台風(929ヘクトパスカル)、3位は93年の台風13号(930ヘクトパスカル)、4位は51年のルース台風(935ヘクトパスカル)と続く。

 5位には54年から91年の間に上陸したいずれも940ヘクトパスカルの台風が6個並んで計10個。

 34年の室戸台風(912ヘクトパスカル)や45年の枕崎台風(916ヘクトパスカル)などの超大型を忘れてはならないが、それらは含まれていない。

 理由は気象庁の台風統計が1951年以降なので、参考記録扱いになっているためだ。

 こうしたデータに基づくと地球温暖化が問題になっている現代よりも、それ以前の時代において、中心気圧が低くて強い台風が多発していた実態が見えてくるのだ。

1950年は突出10個

 温暖化と台風の関係については、興味深い別の研究が存在する。横浜国立大学教育学部の筆保(ふでやす)弘徳教授らによる、1950年より古い時代に日本へ上陸した台風統計の復元だ。

 78年の気象衛星「ひまわり1号」登場まで、台風の海上の進路は船舶での観測を頼りに推定されていたため精度に粗さがあった。

 また、台風の定義にも変遷があり、現在の定義に落ち着いたのは51年。そうしたことから、それ以前のデータは統計として活用されずに眠っていたのだ。

 筆保さんらのグループは1900年から50年までの熱帯低気圧の気圧や風向に関する資料の分析を通じて上陸地点を割り出すなどして日本への台風上陸を計数した。

 この手法を1951年以降の台風のデータについても適用したところ、各年の上陸数は気象庁の統計と大差なく一致して、有効性が確かめられた。

 上図のグラフは、筆保さんらの手法で把握された1900年から2014年まで115年間にわたる日本への台風上陸数の変遷だ。

 従来の1951年以降の部分だけでは2004年の台風の多さが目立ち、近年にかけて上陸数が増えつつあるかのような印象を受けるのだが、1950年の上陸数も10個で突出しており、全体では増加傾向も減少傾向も見られない。

 気象庁の中心気圧データと筆保さんらの上陸数データを合わせると台風の大型化も個数の増加も進んでいないことが得心されるはずである。

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