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【朝晴れエッセー】おかしくも、哀れにも・10月7日

 実家に初めてテレビがやってきたのは、私が小学生の頃だったと思う。

 ある日、わが家を訪れていた祖母が、「あー大変! 水や水や、水がこぼれる!!」と、テレビの前で叫んだ。

 画面には滔々(とうとう)と流れる川、私にとっては普通の風景画像だったが、溢(あふ)れる水をすくうべく、画面に向かって思わず両手を広げた祖母を、おかしくも、哀れにも思った。

 この春、私は背中を押されて、久しく慣れ親しんだガラケーを、やっとスマホに切り替えた。

 私にとっては、説明書の意味不明の言葉の羅列(られつ)に四苦八苦しながらも少しは使えるようになり、このコロナ禍、大いに役立ってくれており、高齢化社会の仲間入りをした私も、頭の錆(さび)とりにはちょうどいいと、せっせと画面をタップして楽しんでいる。

 それならと、久しぶりにパソコンの前にも座ってみた。

 が、なぜ? なぜ動かない? と、そしてハッと気付いた。

 そこには一生懸命パソコン画面を指タップしている私がいて、「何やってるん?」と、自分でもおかしかった。

 便利ながらもデジタル化がますます進む多様な生活環境のなかで、頭がこんがらかる日々…。

 遠いあの日の祖母の姿がしのばれる。

 和田禎子 73 大阪府柏原市

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