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【新聞に喝!】向き合うことへの拒否反応 美術家・森村泰昌

自民党総裁選で菅義偉(すが・よしひで)氏が選出された。臨時国会で第99代首相に指名され、菅政権が発足した=9月16日午後1時45分
自民党総裁選で菅義偉(すが・よしひで)氏が選出された。臨時国会で第99代首相に指名され、菅政権が発足した=9月16日午後1時45分

 9月15日付産経に2つの記事が掲載された。自民党総裁選で菅義偉(すが・よしひで)氏が選出されたことと、テニスの全米オープンで優勝した大坂なおみ選手の記事で、いずれも目立った扱いであった。

 菅政権は、リサーチ機関によってバラつきがありこそすれ、おおむね支持率は高く、国民の新政権への期待度がよく分かる。その半面、今回の総裁選の経緯がはらむ問題点を棚上げしておこうとする傾向が、新聞やテレビ報道にはおしなべて濃厚で、世論もそれに従った感がある。産経9月23日付「耳目の門」の「総裁選余話 青年局長は何に負けたか」にもあるように、派閥間の根回しがあまりにもあからさまで、果たして選挙に民意が反映されたのかどうかと危機感を持った自民党の若手議員たちもいたという。

 さてもう一方の大坂なおみ選手に関する記事では、メッセージ色の強いマスクの着用によって人種差別への抗議を示すという行動に、日本国内の報道がこぞって共感のエールを送っていた。それは日本国内の世論の多くを反映した結果でもあっただろう。

 総裁選と大坂選手。両者間に直接的な関連は何もない。だが2つの報道や世論のあり方を見比べると、ある共通点があったように思われる。それは「向き合うことへの拒否反応」である。期待できそうな新政権なら、それを成立させる総裁選のプロセスには目をつぶっておこうとする傾向が、政治家のみならず、報道や世論の側にも強くあったのは確かである。そしてまた、大坂選手による人種差別への抗議に対しては、これを黒人差別という米国の国内問題としてのみ受け止めて、われわれはいわば対岸の火事を眺める傍観者の立ち位置から、安全にエールを送って満足していたのだとも言えなくはない。

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