PR

ニュース コラム

【一筆多論】コロナと戦う“七人の侍” 大谷次郎 

新型コロナウイルス感染拡大の中、新宿駅に向かうマスク姿のサラリーマンら=東京都新宿区
新型コロナウイルス感染拡大の中、新宿駅に向かうマスク姿のサラリーマンら=東京都新宿区

 なぜ日本人は新型コロナウイルスによる死亡率が低いのか。「マスクの着用率が高いからだ」「過去に類似ウイルスが流行したのだろう」「BCG接種と関係があるはずだ」など諸説が生まれている。

 民度のレベルが違うからだ-。そんな独自の説を披露したのが、麻生太郎副総理兼財務相だった。6月4日の参院財政金融委員会で、新型コロナによる死者について「人口比で100万人当たり日本は7人となる」と説明。英国やフランス、米国などより圧倒的に低いと指摘した上で、こう語った。

 「電話がかかってきたとき、『お前らだけ薬を持っているのか』と、よく言われたもんでした。そういった質問には『おたくとうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言うと、みな絶句して黙るんです」

 そして、この説が定着しつつあるとも強調した。もちろん「なぜ?」を分析するため国民性というアプローチもあるだろうが。

 そうした中で、新型コロナの疑問を科学的に遺伝子レベルで解き明かそうとしている医師、科学者らの研究グループがある。「サイエンスで新型コロナから国民を守る」という純粋な思いから、5月に発足した緊急プロジェクト「コロナ制圧タスクフォース」だ。

 新型コロナの感染拡大を受け、学校の全国一斉休校やイベント中止の要請、布マスクの配布といった数々の対策が取られた。だが、そこに根拠となる客観的事実があるのだろうか。科学者も政治に踏み込み過ぎているのではないか。

 そんな会話がきっかけだった。集まったのは、慶応大の金井隆典教授(消化器学)や京大の小川誠司教授(分子遺伝学)、東京医科歯科大の宮野悟M&Dデータ科学センター長(情報計算科学)ら。ほかにも臨床試験学や遺伝統計学、呼吸器病学などの幅広い分野の医師、科学者が参加する。

 日本人の感染者の遺伝子を分析することで、新型コロナに感染しても重症化しない因子が突き止められれば、日本人に適したワクチン開発につながるだろう。そうなれば、医療崩壊を防ぐことにもつながる。

 今では全国120の大学・医療機関にネットワークが広がった。目標にした感染者(重症100人、中等症200人、無症状200人)の検体(血液)確保はクリアし、1500例に上る。純粋な気持ちが共感を広げ無報酬で協力を申し出る医師も増えている。年内に国際水準とされる3000例に達する勢いだ。

 研究統括を務める金井教授は「経験したことのない未知のウイルスのパンデミック(世界的大流行)に対し、いろいろな協力が重なった。国難に立ち向かう団結力は大きい」と語る。

 目標にした500例以上のゲノム解析が終わり、データを基に重症化する人としない人の違いや、「なぜ?」につながる日本人の特性などの分析を急ぐ。「どんな結果になるか、みんなワクワクしている」(金井教授)という。集まった検体のゲノム解析をさらに進め、精度を高める方針だ。

 白米というわずかな報酬で荒くれ者から村を守った個性豊かな侍たちを描いた映画「七人の侍」にどこか重なる。無報酬、手弁当で集まった現代の“侍”たちが必ず新型コロナの謎を解き明かし、制圧するはずだ。 (副編集長兼論説委員)

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ