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ニュース コラム

【朝晴れエッセー】洗濯室の片隅で・9月28日

 私は83歳まで特別養護老人ホームで働かせていただきました。上司と家族の思いやり、自分自身の健康のありがたさに感謝です。

 利用者さん70人の洗濯物すべてを担当していましたが、それぞれの衣類にはその方の人生のすべてが物語られているように感じ、心をこめて整理するように心がけておりました。

 一番つらかったのは、出勤してすぐに目にとまるゆかたでした。人生をまっとうされ、あの世に旅立つとき着せてあげたものが出されているためでした。

 時折、介護の職員につきそわれて気分転換のため洗濯室にこられる利用者さんとのおつき合いで、いまでも鮮明に思い出されることがあります。

 入室してすぐ私の手首をもって脈をとろうとするRさん。たんぼ1反は300坪でお米は7俵とれるんだよと教えてくださるMさん、軍歌の「戦友」を8番まで暗記していて歌ってくださるKさん、それぞれに歩んでこられた道を物語っておられる姿に敬服するばかりでした。

 現状はともあれ、一番大切な思い出はきっと心の奥にきっちり秘められているのだと、ただ驚くばかりでいとおしくなりました。それを語られるときの一瞬の目の輝きはすごく美しいものでした。

 施設の片隅にある洗濯室でも本当に素晴らしいドラマがあるんだと健康で働けたことに感謝のみです。

高藤妙子(84) 千葉県我孫子市

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