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【記者発】「早めの避難」さて、私には… 大阪社会部・石川有紀

台風10号による強風で、高いしぶきをあげる荒い波がみられた=6日午前、鹿児島県枕崎市(佐藤徳昭撮影)
台風10号による強風で、高いしぶきをあげる荒い波がみられた=6日午前、鹿児島県枕崎市(佐藤徳昭撮影)

 気象庁が事前に「特別警報を出す可能性がある」と警戒を呼び掛けた台風10号では、早くからホテルや旅館に自主的に避難した人々の姿が報じられた。結果的に台風の勢力は弱まって特別警報は見送られたが、ホテルなら暴風雨や浸水のおそれもなく、「3密」も避けられて快適に過ごせると、早めに避難行動を取る人が多いことに驚いた。

 京都大防災研究所の矢守克也教授(防災心理学)に取材すると「宿泊施設が避難に活用された初めてのケース」と評価していた。矢守氏は、避難勧告を受けて避難所に行くのは「ベストな避難」、それより前に知人宅やホテルに自主的に避難するのは「スーパーベストな避難」として、今後もっと必要になるという。ただ、自分のこととして考えると、刻々と進路が変わる台風に備えて思い切った避難の判断をできるだろうか…。

 私の両親は静岡県の港町に住んでいる。昨年10月、東日本に台風19号が接近したとき、警戒を呼び掛ける報道を見て母に電話した。「念のため、隣町の伯母さんの家に避難させてもらったら?」。しかし、母は「今は防波堤も排水もちゃんと整備されているから大丈夫だよ」という。

 ところが数時間後、母から電話で「高潮で玄関が浸水した」。両親は大慌てで2階に生活用品を運び込み、結局、床下ギリギリで水は引いた。こちらは大阪でひやひやするばかり。早めの避難の大切さを痛感した。

 実は、実家は昭和34年の伊勢湾台風のとき、1キロほど先にある防波堤が高潮で決壊し、浸水した地域にある。腰くらいの高さまで浸水し、住民がゴムボートで避難する写真を見たことがあるが、当時3歳だった母に被災の記憶はあまりない。私もまさか61年前のような水害はないだろうと思っていた。

 しかし、全国的に豪雨と台風の被害は深刻化している。近年は温暖化による海水温の上昇で、大量の水蒸気が日本に流れ込み、過去を上回る水災害が起きる危険性は高まっているという。

 今年は九州各地が豪雨で甚大な被害を受け、昨年は東日本台風、2年前には西日本豪雨があった。多くの人に「スーパーベストな避難」を考えてもらうためにも、被災地の声と経験を大切に伝えたい。

【プロフィル】石川有紀

 平成15年入社。奈良支局、大阪経済部などを経て韓国に留学。令和2年2月から大阪社会部。在日外国人や日韓関係に興味を持ち取材している。

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