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【一筆多論】急いては事を仕損じる 長谷川秀行

第99代首相に選出され議場に一礼する自民党・菅義偉総裁=9月16日午後、国会(春名中撮影)
第99代首相に選出され議場に一礼する自民党・菅義偉総裁=9月16日午後、国会(春名中撮影)

 政権発足から間もない政治指導者はどんな政権運営を心掛けるものなのか。安全運転に徹するのも一つだろう。あるいは、最初からアクセル全開で独自色を打ち出そうとするのか。

 トランプ米大統領の1年目を振り返ると、派手な言動とは裏腹に実際の政策は意外と抑制気味だった。追加関税を連発し、中国との全面対決へと突き進むのは2年目以降である。

 安倍晋三前首相は後者の代表格だ。第2次政権が始動するや、看板のアベノミクスを次々に実行に移して路線転換を際立たせた。

 菅義偉首相の場合、いきなり独自路線に向かうとは思えない。とはいえ宰相まで上り詰めたのである。できるだけ早く、菅政権としての実績を挙げたいと渇望しても不思議はない。

 日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが11月の署名を目指して交渉中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、その候補かもしれない。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などと並ぶ多国間のメガ協定だ。実現すれば、自由貿易の基盤はさらに厚みを増す。

 だが、ここは早期妥結を焦らず、慎重に対応するよう菅首相に求めたい。コロナ禍で世界中が混乱する今だからこそ、なおさらそう思う。それはなぜか。

 対中貿易赤字の拡大を懸念するインドが交渉離脱を示唆していることはもちろん大きい。インドは昨年11月に離脱の意向を示し、今年6、8月のオンライン閣僚会合も欠席した。

 日本はインドを含む全16カ国の参加を、という立場である。だが、今の状況で早期妥結を目指すなら、早晩、「インド抜き」を決断せざるを得なくなるのではないか。これは危うい。

 地域大国のインドが抜けると、相対的に中国の存在感が増す。結果的に、経済と軍事における中国の地域覇権の追求を後押しすることになりかねない。

 併せて留意すべきはコロナ禍でもたらされる国際経済の環境変化だ。保護主義が懸念される今、自由貿易に資するRCEPのような取り組みは本来、これに対抗するのに有効である。

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