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【スポーツ茶論】先人を敬う気持ちの大切さ 清水満

巨人の川上哲治元監督
巨人の川上哲治元監督

 いい光景だった。巨人選手の誰もが背番号「16」を背負ってグラウンドにいた。1日の巨人-DeNA戦(東京ドーム)は、『川上哲治生誕100年記念試合』と銘打たれた。“打撃の神様”川上哲治さんへの敬意であった。

 「先人たちが築かれたものは重みがある。先人たちがいたから、今の僕らがある。それを忘れてはいけない」

 原辰徳監督の言葉である。 川上さんは、日本プロ野球史上初の2千安打達成、戦中から戦後における球界のスターだった。監督としても大リーグの「ドジャース戦法」を導入し、長嶋茂雄さん、王貞治さんを擁して“V9”(1965年から9年連続日本一)の偉業を達成。まさに球界レジェンドである。

 リーダー論として原監督がよく口にする言葉がある。

 「『お前さんたちには責任はない。いつも通り思い切ってやればいい』って選手たちには言う。監督やコーチたちがしっかり腹をくくって、選手たちに思い切ってプレーをさせるムードをつくっていくことが大事なんですよ」

 これはV9監督の理念と同じと聞いた。

 3年前にも、同じシーンがあった。2017年3月22日のオープン戦、巨人-日本ハム戦(三重・伊勢)は『沢村栄治生誕100周年記念試合』。沢村さんの背番号「14」をつけて栄誉をたたえた。

 1934年に来日したベーブ・ルース擁する大リーグ選抜を相手に8回1失点の好投をした伝説の投手である。従軍して不運にも戦死。享年27。短い生涯だったが、“伝説は今も生きている”。これはチームに力を与えるだろう。

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 長い歴史を誇る大リーグでは、レジェンドに敬意を払う文化がある。たとえば“ジャッキー・ロビンソン・デー”が有名である。

 人種差別の嵐の中“黒人初の大リーガー”J・ロビンソン(ドジャース)はグラウンドでファンを魅了し、周囲を納得させた。ロビンソンのデビュー日である4月15日に功績をたたえるため、例年、4・15に全選手が背番号「42」をつけてプレーする。

 他の球団でも毎年のように、OBたちを表舞台に上げるイベントが行われ、ファンがスタンディングオベーションで迎える。先人を尊敬し、未来につなげようとする姿勢である。

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 話を日本に戻す。以前ある日の試合前、嫌なシーンを見た。グラウンドに降りた球界OBたちにあいさつさえしない選手がいた。気づかなかったのか、知らなかったのか。ほんのごく一部の選手だろうが、ちょっと悲しくなった。

 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。ドイツの鉄血宰相と呼ばれたオットー・フォン・ビスマルクの言葉である。いまの繁栄を自分の力と思い込み、自らの経験でしか物事の判断をしない、そんな愚か者の姿を想像してしまった。

 多くの先人たちの“良き立ち居振る舞い”があったからこそ、いまの繁栄につながっている。日本の球界シーンにも沢村さん、川上さんだけでなく、多くのレジェンドたちをリスペクトする舞台が、もっとあってもいい。

 原監督は先人を思う。

 「ジャイアンツには歴史、伝統がある。他の球団との違う重さ、だから強くなくちゃいけないんです」

 巨人歴代監督の通算最多勝利は川上さんの1066勝。目下、1063勝(6日現在)の原監督。先人の教えが糧になっているに違いない。

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