PR

ニュース コラム

【風を読む】貴重な史料を後世に残したい 論説副委員長・佐々木類

 那須街道を歩いていると、朱色の機体が目に飛び込んできた。戦前、航空兵を教育するために訓練で使われた練習機の通称「赤とんぼ」だ。

 本来は複葉機なのだが、朽ちて一枚羽だった。長い歳月を思わせる。

 休日を利用してぶらりと訪れた栃木県那須町の山あいにあるのが、「日本で唯一」という触れ込みの戦争博物館だ。赤とんぼはそこに佇(たたず)んでいた。

 この博物館がピンチに立たされている。旧関東軍獣医でシベリア抑留後に帰国した創設者、栗林白岳館長が昨春他界し、運営の不備も重なって存続が危ぶまれているのだ。

 何しろ、展示物は栗林氏が個人で収集した物がほとんどだ。管理の仕方も国や地方自治体などが運営する公的な博物館のようにはいかない。館内の図書館では、貴重な書籍や文書が心ない訪問者に盗まれることも度々だ。

 博物館は、屋外展示のほか、陸軍館や海軍館、特別攻撃隊記念館、日本歴史館、図書館で構成されている。個人収集とは思えないほどの珍しい展示物の数々を見ることができる。

 度肝を抜くのが、屋外にある世界最大級の榴弾(りゅうだん)砲だ。説明文によると、明治37(1904)年、日露戦争で、旧日本軍が旅順攻撃の際に使用した実物だ。

 陸軍館内には、歩兵射撃教本や軍隊教育令、敵機一覧といった携帯用の豆本がズラリと並ぶ。軍服など衣類の中で目を引くのが、西南の役で実際に使用された警官の正帽だ。現在の警視総監に当たる初代大警視を務めた川路利良が率いた抜刀隊のそれなのか。

 新館長の本里福治氏(75)は、「英霊に感謝したいという初代館長の遺志を引き継ぎ、民族の大切な遺産である資料を後世に残していきたい」と語る。

 大雨の中、博物館前から路線バスに揺られて帰途についた。気づけばいつの間にかトンボが車内に紛れ込み、最後尾に座る私の方に飛んで来て近くに止まった。高原の夏は短いなと思いながらよく見ると、赤とんぼだった。何かを伝えにきたのだろうか。

 博物館は維持運営のため、寄付金を募集している。振込先▽みずほ銀行宇都宮支店(普)4832006▽郵便貯金 記号10780 番号36933541▽いずれも一般社団法人 戦争博物館まで

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ