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【新聞に喝!】見いだせない指標に苛立ち 美術家・森村泰昌

東京・表参道をマスク姿で歩く人たち=26日午後、東京都渋谷区(佐藤徳昭撮影)
東京・表参道をマスク姿で歩く人たち=26日午後、東京都渋谷区(佐藤徳昭撮影)

 何が正しいのか分からない。これは今、日本に住む人々が等しく抱く不安であり、次第にそれは苛立(いらだ)ちに変わってきているようにさえ思われる。私自身を顧(かえり)みても、新聞各紙から得られる多様な情報からは、自分自身の指標を見いだせない状態が続いている。かつてであれば、新聞各紙はそれぞれの立場で世論を代弁し、国家の未来を提言するオピニオンリーダーにもなり得たが、今はどうだろうか。新型コロナウイルスに関する記事が増えこそすれ、私たちの行く末を指し示してくれているとは言い難い。

 それも故(ゆえ)なきことではないのかもしれない。というのもコロナウイルスとは、イデオロギーではなく、医学すなわち科学の問題だからである。つまり何が正しいのかを解く鍵は思想家ではなく科学者が握っている。ところがこのところ私たち(というか私)が痛感させられたのは、この科学的知見というものが、意外にもじつに不確定なものだという現実だった。

 科学に素人の私は、科学的方法とは、AかBか黒白をつけるための最終手段だと信じていた。しかし現実はさほど単純ではない。例えば感染の有無を調べるPCR検査の有効性や活用性について、いまだに明確な結論が出ていない。積極的な検査を主張する専門家とそうではない専門家が異なる見解を主張し続け、将来的なビジョンは今もなお曖昧なままである。

 マスク着用の効果についてさえ、目の覚めるような科学的根拠が示されたことがない。着用時に唾液の飛沫(ひまつ)が抑えられるという実験結果は何度も目にしたが、市販の一般的なマスクや手作りマスクに、どれだけ感染の予防効果が見込めるのか、納得できる説明がない。私は少し前のトランプ米大統領のように、マスクを否定したいわけでも、コロナ収束のために日夜尽力されている方々を批判したいのでもない。マスク一つとっても専門家や国が発する言説の多くは残念ながら説得力に欠け、国民の不安や苛立ちをむしろあおる結果になってしまっているのではと懸念しているのである。

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