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【日曜に書く】論説委員・山上直子 消えゆくお盆と光秀の霊

 「初盆は来年ですね。四十九日がまだ済んでいないので」

 先月に身内の葬儀があって今年は初盆だと身構えていたら、そんなお寺さんの一言に拍子抜けした。コロナ下で自粛ムードが広がった今年のお盆。近年は地域や家庭からも消えつつある風習が気になった。

 そもそも盆(盂蘭(うら)盆)とは何か。「盆と正月」などというが、元日とは違って祝日ではない。それでも墓参りなど行事は多く、調べてみると、実家の京都府南部や周辺の奈良県の一部地域に伝わる不思議な話があった。登場するのはなんと、あの明智光秀(の霊)である。

奈良に残る伝承

 その伝承を知ったのは、雨乞いや盆行事の研究で知られる民俗学者の高谷(たかや)重夫(1915~94年)著「盆行事の民俗学的研究」(岩田書院)だった。引用してみる。

 <奈良県山辺郡の『針ケ別所(はりがべっしょ)村史』に、この村の小倉では、盆の八月十三日から九月一日まで高灯籠(たかどうろう)を立てる。また盆提灯(ちょうちん)を表入口や縁に吊る所があるが、これは非業の死を遂げた明智光秀の菩提(ぼだい)を弔うためだとある。光秀が裏毛の年貢を免除してくれた恩に報いるためだという>

 針ケ別所村は奈良県北東部に位置する山間の村で、昭和30年に合併して都祁(つげ)村に、さらに平成17年には平成の大合併で奈良市に編入された。現在の奈良市の都祁行政センターに聞いてみると、親切なことに地元に問い合わせてくれた。

 「もう数軒だそうですが、小倉あたりでは今でも8月13~15日の3日間、提灯をつるしているようですよ」という。

 念のため昭和43年の『針ケ別所村史』を引くと、同地域で盆提灯をつるすのは「非業の死を遂げた明智光秀のボダイをとむらうためにしていて…」と同様の記述があった。ほかに、近隣の『室生(むろう)村史』(現宇陀市)や『御杖(みつえ)村史』にもほぼ同じ慣習と言い伝えが残っている。

 ところがよく考えると不思議なことがあった。光秀ってこの辺りにゆかりがあったっけ?

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