PR

ニュース コラム

【新聞に喝!】東京単眼の転換促すコロナ インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスク姿で職場へ向かう人たち=東京都港区のJR田町駅前(宮崎瑞穂撮影)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスク姿で職場へ向かう人たち=東京都港区のJR田町駅前(宮崎瑞穂撮影)

 今夏も終戦の日がやってきた。敗戦から75年の節目となる。他にも日米安全保障条約の改定から60周年、自民党の結党から65周年、あるいは関西人であれば、大阪万博から50周年など節目は多くある。だが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)元年となった今年は、疑いなく世界史における、一つの転換点となろう。

 これにより、社会のオンライン化への移行のみならず、テレワークなどの普及によって中央と地方の関係も大きく変わる契機となる。あと数年コロナ禍が続けば、首都東京の位置づけは変容し、政治の中心であることに変わりはないかもしれないが、もはや経済の中心である必要はない。社員は地方に居住し、オンラインで会社とつながればいい。土地や生活費は地方の方が安価であり、生活も豊かになる。地方の人口減と過疎化といった深刻な問題を改善する道筋も立つ。加えて、いずれ起きる首都直下地震などの大規模災害への国家的ダメージも軽減できる。

 このように、コロナ禍は、現在とは異なる国家の在り方を追求する機会を、われわれに与えていてくれていると捉えることもできよう。

 問題はメディア-とりわけ全国紙-にも変化に機敏に対応する用意があるかにある。日本の全国紙はどこも東京本社が一番立派な社屋を構え、それが力関係を物語っているかのように、1面を組む際の裁量権の多くは各社の東京本社が握る。「東京ドーム〇個分」という表現も、無意識に表れる東京中心の思考だ。けれど、今後もこうした報道姿勢のままでいいのか。

 戦前は違った。同じ新聞社であっても、大阪と東京はライバル関係にあり、切磋琢磨(せっさたくま)していた。紙面もそれぞれの地域性を反映して独自色がいかんなく発揮され、主張も違った。たとえば、満州事変以降、東京の紙面が徐々に軍部に同調して右傾化していき、揚げ句の果てには軍の暴走を正当化する論調を前面に打ち出すようになったものの、大阪は反骨精神をむき出しにし、政府から言論統制が行われるまで、東京の論調とは一線を画した。

 多様性が重視される時代。アジアで最も長い民主主義としての歴史を有する国家らしく、新聞報道にも単眼的な視点を排し、地方からの異なる視点をより主要紙面に反映にできるように改めていくべきではないだろうか。日本は何も東京だけではないのだから。

【プロフィル】簑原俊洋

 みのはら・としひろ 昭和46年、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大デイビス校卒。神戸大大学院博士課程修了。博士(政治学)。同大学院法学研究科教授。専門は日米関係、国際政治。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ