PR

ニュース コラム

【風を読む】金正恩委員長の勘違い 論説副委員長・榊原智

 朝鮮労働党の政治局非常拡大会議に出席した金正恩党委員長=2020年7月25日、北朝鮮・平壌(朝鮮中央通信=共同)
 朝鮮労働党の政治局非常拡大会議に出席した金正恩党委員長=2020年7月25日、北朝鮮・平壌(朝鮮中央通信=共同)

 今に始まったことではないが、北朝鮮が核抑止力の効用に関して誤った認識を示しているので指摘したい。

 北朝鮮の独裁者、金正恩朝鮮労働党委員長は、朝鮮戦争の休戦協定締結から67年を迎えた7月27日の演説で「頼もしく効果的な自衛的核抑止力があるゆえに、わが国家の安全と未来は永遠に堅固に保証される」と語った。

 北朝鮮は「核保有国」へと発展する道を歩んできたと振り返り、「帝国主義反動勢力や敵対勢力のいかなる形の圧迫や軍事的威嚇にも揺るぎなく、自らをしっかりと守れるように変わった」とも述べた。

 トランプ米大統領との会談で非核化の意思を伝えた人物の発言である。金委員長にとって米朝首脳会談は、核・ミサイル戦力拡充への時間稼ぎをする場だったのだろう。

 北朝鮮の核・ミサイル戦力は「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であり、地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうもの」(令和2年版防衛白書)だ。北朝鮮が「弾道ミサイルに核兵器を搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有しているとみられる」(同)からである。

 では、北朝鮮には核・ミサイル戦力があるから軍事攻撃をしかける国はなくなり、もう滅ぶことはない、という金委員長の主張はどうか。

 てんで正しくない認識である。

 北朝鮮は、ソ連の独裁者、スターリン流の専制体制が今も生きる国で、故金日成主席の血筋を継ぐ者だけが最高権力を握ってきた。北朝鮮の安全と未来が保証されるというのは、この一族の第一人者を独裁者に戴(いただ)く体制の継続を指している。

 米軍が北朝鮮をたたく可能性が皆無になったわけではないし、そもそも専制体制の国は核・ミサイル戦力を持っても安泰が保証されるわけではない。核保有によって国家体制の存続が見込まれるのは、個々の政権というよりも体制自体が国民の支持を受ける先進民主主義国の場合だけである。

 恐怖で支配する専制体制には崩壊の恐れがつきまとう。北朝鮮よりもはるかに強大だったソ連は膨大な核戦力を誇ったが結局は滅んだ。金委員長は、核保有にしがみつけば大丈夫だという勘違いを改めたほうがいい。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ