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【一筆多論】「中国流」を押し返せ 長戸雅子

 沖縄県の尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=2012年9月
 沖縄県の尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=2012年9月

 「今や衣の下のよろいを隠さなくなったね。恫喝(どうかつ)も平気。南シナ海問題ではとりつくろいもしなくなったじゃないか」

 香港国家安全維持法(国安法)の施行、南シナ海への野心、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での公船による領海侵入…。中国が加速させる強圧姿勢をこう表現するのは自民党の「ルール形成戦略議員連盟」会長の甘利明党税制調査会長だ。

 中国と長年の交渉経験を持つ元外交官も「数年ほど前まではあった遠慮や妥協がなくなった」と語る。

 5月の当欄で「ひたひた迫る中国流」として、中国が国連専門機関のトップを複数務め、各機関を通じて自国に有利なルール作りを狙う姿を紹介したが、これに対抗するため、日本が動き出した。

 甘利氏率いる同議連は6月、「国際機関のガバナンスと選挙」をテーマに会合を開き、日本にとって経済や安全保障など国際戦略上重要なポストを見定め、閣僚経験者を擁立するなど、国際機関の幹部ポスト獲得を政府一丸となって目指す方針を確認した。

 「日本は国際機関のトップに対して淡泊で『名誉職』のようにとらえていたが、実は国益の追求という点でも極めて戦略的なポジション。10年ぐらいのスパンで候補を見つけ、必要な経験をさせ、肩書もつけて育てていく」(甘利氏)

 エチオピアで保健相を務めた世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長をはじめ、専門機関のトップには閣僚経験者が多く、官僚中心の日本の候補が肩書の点で見劣りするのは否めなかったからだ。

 国際機関が中立性を保ち法の支配にのっとって運用されるのはもちろんだが、中国に伍(ご)して日本がトップを複数とることが「最終目標」なのではもちろん、ない。透明で開かれた手続きのもと形成されてきた国際ルール、ひいては「秩序」が中国の覇権主義でぬり変えられないよう、一連の動きを米国などと連帯して押し返すことにある。

 実際、思わぬところに「中国流」は顔を出す。2018年3月、中国は国連人権理事会に「相互に有益な協力の促進」と題する決議案を出し、採択された。

 決議は人権擁護の大切さをひとまず訴えながらも、各国の歴史的、文化的背景への考慮が必要という、いわば「人権による内政干渉」を牽制(けんせい)する内容だった。中国の影響力を受ける多くの加盟国が賛成に回り、唯一反対したのは米国。日本は棄権した。

 今になって思えば、この決議は国安法を対外的に正当化する意味を持ってしまっている。

 議連の会合で講演した高須幸雄元国連大使は改定が検討される政府の国家安全保障戦略で「民主主義や法の支配に基づいた国際秩序が決して弱められてはならないことを高い優先順位で主張していく必要がある」と話す。

 高須氏は国連関係の多くの選挙で陣頭指揮を執ってきた。「日本にはかつてほどの経済力も強い存在感もない」と指摘する一方、こう語る。「損得勘定ではなく、日本は相手国の立場に立った支援を行い、国際社会に『徳』を積んできた。こうした蓄積を生かして連携し、日本独自の『すごみ』を発揮してほしい」

 中国流を押し返す貴重なヒントではないだろうか。(論説委員)

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