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【朝晴れエッセー】お坊さんとコーヒー・7月31日

 父が亡くなり、母が病院から帰る見込みがなくなって、私は自分が元気なうちに、少しずつ、実家の片付けをしようと思うようになった。

 本や服を処分するのは案外さばさばした心持ちであるのに、家に飾られたお人形たちには、なかなか手をつけられなかった。

 西洋ドールやこけし、博多人形など、長い年月、家族とともにあり、部屋を彩ってくれたものたち。魂が宿っているような気がする。

 人形を供養してくれる所があると聞いて調べてみたら、全国どの県にも受け付けてくれる寺院があった。若いときに訪ねたことのある、京都のお寺も名を連ねていた。

 段ボール箱に、20体あまりの人形を入れ、住所、氏名などを書いた紙を1枚添えてふたを閉じる。長い間ありがとう、さようなら。感謝をこめて手を合わせる。

 近所の店へ車で運び、宅配便で送った。供養代は1箱、3千円。郵便振替で払う手はずになっていた。ためらいと達成感が入り交じって、しばらくは複雑な気持ちだった。

 10日後、お寺から白い封筒が届いた。

 一筆箋に手書きの文字で、「大切なお人形を住職が心を込めて読経し、お供養いたしました」とあった。

 粗供養と、のしを巻かれた小さな袋が同封されていた。なんとドリップ式のコーヒーパックだった。

 お寺の粋な計らいに癒やされて、いつのまにか胸の中のわだかまりは消えていった。

山下久美子 65 大阪府枚方市

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