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【大阪特派員】山上直子 温故知新、コロナと茶の湯

 もうふた昔ほど前、茶道の稽古を始めたころに読んで印象深かったのが三浦綾子著『千利休とその妻たち』のこのシーンだった。

 <「何?まわし飲みとな」 宗易の目裏(まなうら)に、一つの盃からひと口ずつブドー酒を飲む信者たちの姿が浮かんだ。

 (まわし飲みのう)

 それこそは、肉親の情よりももっと堅い信義の結びつきを思わせる姿であった。

 (茶の湯にも……)

 そのまわし飲みが使えぬものかと、宗易は思った。茶の湯の世界こそ、客も亭主(ていしゅ)も、心をひとつに解け合わさねばならぬ世界である>(小学館eBooks 三浦綾子電子全集から)

 宗易とは茶の湯を大成した茶人、千利休のこと。濃茶を回し飲むようになったのは、利休が、キリシタンのミサでワインを回し飲む情景にヒントを得たのではないか-という解釈で書かれていた。もちろん小説であって、その真偽は定かではないけれど。

 前置きが長くなったが、ウイルス禍でこれまでの生活が大きく変化している。伝統文化である茶道の世界もしかり。稽古場での「3密」回避だけでなく、一碗のお茶(濃茶)を数人で飲み回すという古来の作法に、茶会や稽古を躊躇(ちゅうちょ)する人が少なくないのである。

 そこで先月末から茶道裏千家の千宗室家元がホームページで「各服点(かくふくだて)」という作法の紹介を始めた。「服」とは一服のこと。つまり、数人で飲み回す濃茶を「各服」にしようという工夫だ。しかも、曽祖父にあたる13代圓能斎(えんのうさい)が明治末期に創案したものだという。その時代背景と工夫の内容、そして広く一般に公開した目的を家元に聞いた。

 「たいへんな時代ですが、幸いご先祖さまが100年以上も前に定めてくださっていた。茶の湯を未来に残していくためにも、どなたでも、流儀を問わず参考にしていただければと思います」

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