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【論壇時評】8月号 民意即応政治と揺らぐ「官邸主導」 文化部・磨井慎吾

本日から開始されたGotoキャンペーンを受け記者団の質問に答える安倍晋三首相=7月22日午前、首相官邸(春名中撮影)
本日から開始されたGotoキャンペーンを受け記者団の質問に答える安倍晋三首相=7月22日午前、首相官邸(春名中撮影)

 政府が22日に開始した観光支援事業「Go To トラベル」の対象から、土壇場で東京都発着の旅行が外された。東京を中心とした新型コロナウイルスの感染拡大が理由というが、もとより冷え込んだ経済活動を回復方向へと動かす目玉としてリスクは承知の上で推進されていた政策であり、国内最大の人口と経済力を擁する首都が対象外となれば効果は少なからず減じてしまう。それでも官邸が直前になって事業縮小に転じたのは、世論の抵抗が大きいこの政策を強引に押し通した場合、内閣支持率の大幅低下などの強い逆風を浴びるのは必至と判断したからだろう。

 対象世帯限定で30万円とする当初案から全国民一律10万円給付に急転した特別定額給付金や、検察庁法改正案の見送りの件など、官邸肝煎りで途中まで強力に進められていた政策が、世論の動向や会員制交流サイト(SNS)の反応に左右される形で突如ぐらつく事態が最近繰り返されており、今月の論壇誌ではこの問題に関する論考が目立った。政局的に見れば「安倍1強」体制の揺らぎと位置付けられるだろうし、反政権の立場からは、政策に対する国民の反発が即時かつ直接に反映された結果だと歓迎されるかもしれない。だが、一連の「民意の反映」は本当に良い話なのか。社会学者の西田亮介「民意に『耳を傾けすぎる』政治でいいのか」(中央公論)は、まさにこの論点を突く。

 2度の補正予算を合わせた今回のコロナ危機対策の事業規模は約230兆円。国際的にみても巨額の対策がなされたが、内閣支持率は下落傾向のままなかなか浮揚しない。こうした事態を受け、「支持率の低下と不支持率の上昇に伴って、これまで政権が『重要政策』に位置づけてきたものの国民に不人気な政策の撤回や修正に加え、わかりやすく訴求する給付措置の策定が相次いでいる」と西田は言う。

 従来ならば有事下においても公平性の問題から避けられてきた事業者向け給付をはじめ、学生向けなど特定の費目や対象に対する給付が、他より優先して行うべき根拠や効果がはっきりしないまま乱発されている現状について、西田は「原理原則がなく、場当たり的で、ポピュラーになりそうなものを取り込んでいるようで、その姿はさながら『耳を傾けすぎる政府』だ」と指摘する。

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