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【新聞に喝!】権力に挑むメディア インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋

 新型コロナ禍による移動自粛の最中、テレビの視聴時間が一気に増した読者も多かろう。筆者もその一人で、忽然(こつぜん)と湧いた時間をオンデマンドの配信サービスを活用しての映画鑑賞に充てた。

 特に印象に残ったのが、新聞メディアに関係する2作品だ。まず、トム・マッカーシー監督の『スポットライト 世紀のスクープ』(2016年公開)だ。同作品は、カトリック教会の神父による児童への性的虐待を、マサチューセッツ州の地方紙ボストン・グローブがスクープするという実話を元に映画化したものである。巨大な権力に挑む小さな地方紙という構造は、まるでダビデとゴリアテの決闘のようで痛快である。

 次いでは、スティーブン・スピルバーグが監督し、メリル・ストリープとトム・ハンクスが演じた『ペンタゴン・ペーパーズ』(2018年公開)である。挑んだのは国家権力そのものだ。ニクソン政権が隠蔽(いんぺい)していたベトナム戦争に関する最高機密文書についてロバート・マクナマラ国防長官がワシントン・ポスト社主で友人のキャサリン・グラハムに公表の見送りを執拗(しつよう)に求める。しかし、友情より国民に真実を示すことこそメディアの使命だとの信念から社主が政府に立ち向かうことを決心したシーンは圧巻だ。

 むろん、メディアが政府などの国家権力と立ち向かうことをテーマとした映画の代表作は、何といってもロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンが演じ、アカデミー賞を4部門で受賞した『大統領の陰謀』(1976年公開)であろう。筆者もこの映画を初めて見たときに、大統領を政権から引きずり落とすこともできる新聞の力に驚愕(きょうがく)しつつ、敬意を抱いた。

 翻って日本。メディアと権力はどのような関係にあるのか。同様のテーマで日本のメディアが活躍する映画を咄嗟(とっさ)には思いつかない。当然、新聞の使命の一つに市民目線で政府の監視役を務めることがあろう。だが、実際どこまで機能しているのか。新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言中に東京高検検事長であった黒川弘務氏と記者らが行った賭けマージャンの報道に触れつつ、こうした思いがよぎった。知人記者たちによれば、情報を得る上での政府関係者とのお付き合いは常套手段(じょうとうしゅだん)であり、問題は発覚したことにあるらしい。はて、他の先進国のメディアも同様の行動規範を有しているのであろうか。

【プロフィル】簑原俊洋(みのはら・としひろ) 昭和46年、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大デイビス校卒。神戸大大学院博士課程修了。博士(政治学)。同大学院法学研究科教授。専門は日米関係、国際政治。

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