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【直球&曲球】春風亭一之輔 なーんかみんな他人事なんだよ

記者会見を終え、引き揚げる東京都の小池百合子知事=10日午後、都庁
記者会見を終え、引き揚げる東京都の小池百合子知事=10日午後、都庁

 寄席の営業も再開した。キャパは人数制限し、ソーシャルディスタンスを保って一席間隔に座り、消毒、換気の徹底、お客はマスク着用の厳戒態勢だ。

 この原稿を書いている10日の都内の感染者は243人。寄席の楽屋でワイドショーを見ていると、小池百合子都知事が会見で、しきりに若い世代へ対してもっと危機感を持つように、と自覚を促している。MC(司会)とゲストが「このままだと大変だ!」と数字を挙げてわめいていると、出囃子(でばやし)が鳴り、私の出番となった。

 高座にあがると80人くらいのお客さんだろうか。おじぎして、ちょっと考え、マクラで思い切ってみた。「昨日は224人で…今日の数はね…」。場内がピリっとする。「243だそうです」。沈黙。「…景気悪いね。ドーンと600くらいいけばいいのにね。細かく刻んできやがって!」

 笑った。「いいお客」だ。「一昨日、70人台に落ち込んだときは皆さん、ちょっとガッカリしませんでしたか?(笑)」。まだ笑っている。「良過ぎるお客」だ。「数字が上がるとなんかテンション上がりませんか?」。はい、と返事するおじさん1人。「皆さん、ちょっとおかしいですよ」。何人かうなずいている。「どこか他人事(ひとごと)なんですね、私も皆さんも」。拍手。「寄席なら罹(かか)らないと思ってるでしょ?」。微笑。「楽屋の陽性率は70%ですからね」。大笑い。「命知らずですね(笑)。お互い最後の落語になるかもですから、心して聴いてくださいよ」。拍手。

 放送で言ったら大炎上だろう。寄席は「不謹慎を楽しむ悪所」ですから。でもさ、いたずらに真偽不確かな数字で不安を煽(あお)ったり、具体的にどうしろとも言わず、対策は店任せで、「GO TO キャンペーン」とか言ったり、皆が無理だと思ってる東京五輪をまだ諦めてない「ふり」をしているほうがよっぽど不謹慎。寄席のお客さんは素直で、しかも世の中の空気が分かってる。不謹慎なのは寄席の世界だけでいいので、お偉いさんもそろそろ本気出してくれないか。なーんかみんな他人事なんだよ。

                   ◇

【プロフィル】春風亭一之輔

 しゅんぷうてい・いちのすけ 落語家。昭和53年、千葉県生まれ。日大芸術学部卒。平成13年、春風亭一朝に入門して朝左久、二つ目昇進時に一之輔を名乗る。24年、21人抜きで真打ちに抜擢(ばってき)。古典落語の滑稽噺を中心に、人情噺、新作など持ちネタは200以上。

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