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【風を読む】「新たな日常」というけれど 論説副委員長・長谷川秀行

個室オフィスとして利用できる「YOLO BASE」のホテルの客室=大阪市
個室オフィスとして利用できる「YOLO BASE」のホテルの客室=大阪市

 新型コロナウイルス時代の「新たな日常」がもたらすものは何か。そんなことを漠然と考えている。マスク着用や在宅勤務、オンライン飲み会などは今や常識だ。3密を避けるには対面よりネットである。その傾向はますます強まろうが、人と接する機会がどんどん減る生活で本当の満足を得られるのか。変化についていけない人はどうなるのか。そもそもコロナ禍が終息しても、新たな日常は続くのか。そこにまだ確信を得られないのである。

 コロナ禍が「パラダイムシフトとも言うべき大きな変化を世界に引き起こしている」との一文が政府の骨太方針案にある。これを加速させているのがデジタル化だと指摘し、新たな日常を実現する技術の実装が急務という。

 海外より遅れているデジタル化の現状を踏まえれば、これはこれで重要な取り組みである。だが、その先に人は今より幸福な日常を送れるのか。その議論をもっと深めておきたい。

 在宅勤務の広がりは、満員電車の通勤が当たり前だった日本社会の通念を変えた。コロナ禍を持ち出すまでもなく、グーグルやアマゾン・コムなどの巨大企業が普及させたビジネスも社会を一変させた。大事なことは、変革がもたらす日本社会の将来像である。

 思い出すのが、ソニー創業者の井深大(まさる)が晩年の平成4年、最後に出席した幹部会議で「遺言」と称して残した言葉だ。井深は、パラダイムとは「大衆全部が信じて疑わないこと」とした上で、これを覆し、人々の心を満足させる新たなパラダイムを考え続けるよう促した。デジタル化はそのための「道具立て」にすぎないと断じた。

 目的のために手段がある。そこをはき違えて手段を追求しても満たされた未来が待っているとはかぎらない。

 暴論を承知でこんな空想をした。受験英語の苦労をなくし、教育を根本から再構築するため英語の授業を全廃する。日本人の英語は自動翻訳に任せ、そのためのAI技術を確立する。目的を明確にした上で手段を考える。そうした議論はもっとあってもいい。

 コロナ禍だからと、やみくもに「新たな日常」を連呼されてもピンとこない。その前に大胆な構想力で望ましい将来像を描く必要がある。もちろんこれは、政治の重要な役割である。

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