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【記者発】国産ワクチン確保の機会逃すな 大阪総局・安田奈緒美

大阪大とベンチャー企業アンジェスが開発中のDNAワクチン(大阪大提供)
大阪大とベンチャー企業アンジェスが開発中のDNAワクチン(大阪大提供)

 大阪で、国内初となる新型コロナウイルスの予防ワクチンの治験(臨床試験)が始まった。バイオベンチャーのアンジェス(大阪府茨木市)と大阪大などが共同開発した「DNAワクチン」だ。これまで同社は遺伝子治療薬の開発を手掛けていたが、3月5日にワクチン開発の着手を発表してからわずか4カ月で人への治験にこぎ着けた。

 ただ、世界に目を転じると、ワクチン開発は英国や米国、中国が大きく先行する。英アストラゼネカは治験の最終段階に入り、米ファイザーも治験が順調に進むという。「オールジャパンでワクチンを」と強調するアンジェスの創業者、森下竜一・大阪大学大学院教授は「ワクチンが世界覇権争いの新たな要因になるのでは」と懸念する。

 国内のワクチン産業は長く「世界の潮流から取り残されている」と指摘されてきた。既存のワクチンを特定の団体や企業が製造・販売するだけで、適切な競争が起きず、より質の高いワクチンの研究や開発が進まなかったからだ。

 そこで国は2000年代に、新型インフルエンザなどの脅威に備え、大手製薬企業とワクチンメーカーの提携など業界再編を促した。しかし、ほとんどが頓挫(とんざ)した。

 予防ワクチンは健康な人に投与するため慎重な安全性の検証が欠かせず、接種で引き起こされる副反応が重ければ開発は止まる。いつ起きるか分からないパンデミックへの備えでは採算も取りにくい。技術的、資金的に高リスクなのに国による経済的支援が明確に示されず、企業努力に任せた産業活性化は実現しなかった。

 しかし今回、国内ではアンジェスをはじめ塩野義製薬などの企業が新型コロナワクチン開発の参入を決めた。「安全保障の観点からも国産ワクチンが必要」(塩野義の手代木(てしろぎ)功社長)と、製薬企業としての使命感が発揮されたのに加え、国がワクチン開発や製造体制強化のために補正予算約2千億円を計上したことも後押しする。

 国はこうした機運を逃してはならない。開発参入のメリットを明確に示し、財政支援を継続することが今度こそ必要になる。これが、国民の生命と安全を守るワクチンを自前で確保するための、最後の機会かもしれない。

                  ◇

【プロフィル】安田奈緒美

 平成11年入社。大阪文化部でクラシック音楽、大阪経済部で製薬、機械、財界などを担当。昨年11月から大阪総局で関西広域面を担当。

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