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【日曜に書く】見えないものを見る文化 論説委員・山上直子

全盲の文化人類学者、広瀬浩二郎さん
全盲の文化人類学者、広瀬浩二郎さん

 「いやあ、ほんとわれながら情けなかったです。もう20年も通っているのに迷うなんて」と国立民族学博物館の広瀬浩二郎准教授が苦笑した。全盲の文化人類学者で知られ、自称「座頭市流フィールドワーカー」だ。

 同館は万博記念公園(大阪府吹田市)内にある。駅から15分ほど歩くのだが、このところ在宅勤務が続いて久しぶりに出勤すると、何度か道に迷ってしまったという。通勤ブランクに加え、どうやらマスクの影響があるらしい。

 「顔のセンサーがね、明らかに鈍る。マスクをつけると“野生の勘”が損なわれてしまうと感じます」

顔はセンサー

 新型コロナウイルスの感染拡大で、今や日本中がマスク社会だ。つけていないと不審な目で見られるほどだが、一方で困る人もいる。例えば大阪府の吉村洋文知事が会見に立つと、それまでつけていたマスクを外す姿が話題になった。聴覚障害者が口の動きを読み取れないという指摘を受けてのことだ。では、視覚障害者は?

 「私たちにとっては顔全体がセンサーみたいなものなんです。においも重要な情報源ですし、風の流れで人や物の気配を察知しているので」

 広瀬さんは昭和42年東京生まれ。13歳で失明し筑波大付属盲学校から京都大に進んだ。大学院で文学博士号を取得し、平成13年から同館勤務。専門は「日本宗教史」と「触文化論」だ。

 新型コロナの感染拡大を受けて京都の出版社「小さ子社」のウェブサイトで連載中の「それでも僕たちは『濃厚接触』を続ける! -世界の感触を取り戻すために-」が話題である。ちょっと刺激的なタイトルだが、物や人に触れる生活が当たり前の広瀬さんたちにとって「触れない」ことは死活問題だ。

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