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【外信コラム】ソウルからヨボセヨ 百潭寺の歴史隠し

黒田勝弘特派員
黒田勝弘特派員

 韓国の東北端にある名勝・雪岳山(ソラクサン)の周辺は渓流釣りのポイントである。梅雨前に寸暇を惜しんで出かけたが釣果はよくなかった。そこでかねて気になっていた中腹の山奥にある古刹(こさつ)・百潭寺(ペクタムサ)を訪ねた。1988年に退任した全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領が“政治的逃避”として夫妻ともども2年間、隠遁(いんとん)したことで知られる寺だ。

 雪岳山は標高1700メートルほどだが、渓谷が突然、開けて広い河原になったところに寺があった。実に絶景だったが、お目当ての全夫妻隠遁の“歴史”を物語るものが何もない。案内の住職に聞くと、40年前の光州事件に関連しあらためて全氏の責任が政治問題化しているため、記念物はすべてしまい込んだという。関連の表示もない。

 民主化要求の反政府武装闘争になった光州事件は軍の鎮圧で多くの死傷者が出た。当時、軍首脳だった全氏は大統領退任後その責任を問われ裁判で死刑判決(後に赦免)まで受けたが、左翼革新勢力などは執拗(しつよう)に追及を続けている。

 それまで無名だった百潭寺は全夫妻の隠遁で有名になり、観光スポットにもなった。しかし政治的に問題だからといってその歴史を消そうというのだ。住職は申し訳なさそうだったが、後の政治事情で事実もなかったことにするというのが“韓国人の歴史観”らしい。(黒田勝弘)

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