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【新聞に喝!】疑問多い「スペイン風邪」との比較 インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋

千葉県睦沢町の町立歴史民俗資料館で公開されている「スペイン風邪」に関する資料=5日、同町
千葉県睦沢町の町立歴史民俗資料館で公開されている「スペイン風邪」に関する資料=5日、同町

 新聞の使命には、権力に対する目付け役とともに、スピード感をもって現在の事象の動き〈フロー〉を追いかけるというのがある。逆に、過去の情報である〈ストック〉への関心はおのずと希薄となるため、たまに過去から学ぼうとすると、比較の誤謬(ごびゅう)、あるいは間違った歴史の教訓を得てしまうことがある。

 たとえば、日本の新聞報道各社はこぞって、1世紀以上前のスペイン風邪と新型コロナを比較した。しかし、その比較に前のめりになるあまり、科学的な教訓さえ導こうとする行為には首をひねらざるを得ない。

 対象とされる時代が遠く、世界情勢も今とは大きく異なるからだ。当時は、それまで世界が経験したことのない未曽有の〈大戦争〉が戦われ、罹患(りかん)して病死した多くは戦場の兵士であった。また、医療体制・技術にくわえ、ウイルスに対する知識も現在とは雲泥の差があった。

 医者である友人は、抗生物質が広く用いられるようになった前と後(フレミングによるペニシリンの発見は1928年で、使用は1940年代になって)では医学的な乖離(かいり)がとてつもなく大きく、それをまたぐ比較分析にはおのずと疑問符がつくという。すなわち、パンデミックの背景にあった環境がまるで違うのである。

 われわれが新型コロナと戦う上で、より検証にふさわしい事例はないのか。そんなことはない。世界保健機関(WHO)推計で、全世界で200万人の命を奪った1957年のアジア風邪や、同100万人が亡くなった1968年の香港風邪だ。ウイルスの種類は異なるものの、これらは時代的に近く、大戦争の真っただ中でもない。そのため、当時の社会がいかに対応したのかを参考にできる。

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