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【一筆多論】行列のない中医協継続を 佐藤好美

 厚生労働省の審議会の一つに、「中央社会保険医療協議会」というのがある。略して中医協(ちゅういきょう)という。

 年間40兆円を超える医療費の配分や、入院や外来の価格、調剤や薬剤費などの公定価格を決定する審議会である。

 この審議会が、新型コロナウイルスによる外出自粛を受けて、4月から複数回、オンラインで開催された。朗報である。

 「やれば、できるじゃないか」という感じだ。

 なにしろ、傍聴が難しいことで有名な会議なのだ。「行列のできる審議会~中医協の真実」(ロハスメディア)という本まで出版されているくらい。

 報道には傍聴枠があるが、開催の告知から締め切りまで2日しかないこともある。聞かせたくないのだろうか?と思う。

 一般傍聴は、当日の会場で先着順だ。会場が狭いと、希望者は朝5時台の始発に乗って現地で列を作るなどということが起きる。開会は9時である。世の中の生産性をそいでいる。

 傍聴するのは、製薬や医療機器などの業界関係者が多い。開発した薬剤や医療機器に価格が付くか、いくらになるか、薬価制度はどうなるか。企業の命運がかかるから真剣である。

 しかも、参加する委員は百戦錬磨で会議は台本通りには進まない。森田朗・津田塾大教授は平成27年まで会長を務めた。

 著書「会議の政治学III 中医協の実像」(慈学社出版)で自身を「猛獣使い」と称し、中医協では、猛獣が猛獣使いにかみつくことが「ときどきあった」と記す。一方、意見があっちこっちへ拡散するときは、「牧羊犬」になって1カ所にまとめるのだという。

 傍聴の列が特に長かったのは数年前。薬剤の価格が、効果に見合うかどうかを検証する制度「費用対効果評価」が議論されていた。「始発に乗っても傍聴できない」と、ぼやく声を聞いた。

 ばかげていると思い、インターネット中継すべきだと事務方に言ったことがある。とある役人の回答は、「実現しようとしたことはあるが、委員の一部が反対して、できなかった」というものだった。

 それが今や、オンライン開催され、動画投稿サイトYouTubeで見られるのだ!

 5月13日の会議では、小児難病の薬剤「ゾルゲンスマ」に約1億7千万円の価格がついた。過去最高だ。新型コロナ対応で急ぐ課題は持ち回り開催もあろうが、情報公開が欠かせないものはある。各委員もそう考えてオンライン会議を受け入れたのだろう。

 新型コロナ対応で世の中は一変した。緊急事態宣言の前は、オンライン会議がこんなに広がるとは思っていなかった。しかし、試してみると意外に使える。

 先行きには不安も不透明感もある。だが小さな成果を糧に、「悪いことばかりでもなかった」と前へ進みたい。ICT(情報通信技術)の活用はその一つだ。

 中医協の会場はたいてい、多くの人が座れるよう隙間なく椅子が並べられている。ぎゅう詰めだから、ひとたび奥へ入ると、終了まで出られない「3密」な空間だ。

 緊急事態宣言の解除後もオンライン会議を継続するかどうかは「未定」だという。継続すべきだ。「新しい日常」を、ぜひ中医協でも。(論説委員)

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