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【一服どうぞ】ゆとりを持ちませんか 裏千家前家元・千玄室

裏千家前家元・千玄室さん
裏千家前家元・千玄室さん

 「日常茶飯事」。ありふれた、特に取り上げるまでもないことを表す言葉であるが、この中に茶が入っている。一家が茶の間で茶を飲みながら会話を楽しみ、来客があれば茶を供する。また大工や庭師が仕事をしていれば一休みをと、朝の10時頃や、おやつ時間の午後3時頃にお茶とお菓子をたばこ盆に添えて出したものである。古来このように生活の中に茶が溶け込んでいたが今日ではコーヒーやペットボトルの飲み物が日常生活の中に座りこみ、鉄瓶、急須(きゅうす)、茶碗(ちゃわん)などが姿を消しつつある。茶の間という言葉もこの頃ではあまり使われない。

 日本人の生活が西洋と変わりないようになったことは、ある点から言うと手間暇を惜しむようになってきたからではないだろうか。私は海外生活を体験して、何か物足りなさを感じたことがある。考えてみると「ゆとり」「間の持ち方」であり、洋式は単刀直入「直」すなわちストレート。日本を訪れた旅行者は「直」を離れ、「ゆとり」を知る。のんびりしている風景のあらゆるところに独特の「情」があることを感じる。

 ヘルマン・ヘッセの『放浪と懐郷』の中に「何もきめずに行った国で思いがけないことに出会う。それがその国の魅力かもしれない」の一文がある。現代ではその国の魅力を知って理解してもらいたいと同じようなプロパガンダを広く発信している。ツーリストはそうした手引きでその国を訪れる。ヘッセ曰(いわ)く「訪ねてみて思ったほどでない。そのような落胆はあって当然だ」と。期待して訪ねた国が思ったほどでなかったことなど度々私も体験した。そして帰国しては日本に生まれ育ってよかったとしみじみ思う。

 人間の心の動きには知と情と意が有り、特に日本人は感情に動かされる。「もてなし」という言葉は感情の中にある「情」なのである。

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