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【日曜に書く】論説委員・中本哲也 別役実さんをしのぶ

◆言葉の記号化

 別役さんとは生前に2度、会う機会があった。1度目は友人の林次樹君が別役作品(もちろん不条理劇)の舞台に出演したとき、楽屋で「こいつは産経新聞」と紹介された。

 2度目は盛岡支局勤務だった2000(平成12)年2月、地元の劇場で上演する創作脚本を公募作から選ぶ「もりげき戯曲賞」の発表会見だった。特別審査員の別役さんは講評で「言葉の記号化」について語った。

 「言葉には、その土地や話す人の歴史・風土、肌のぬくもりのようなものが地層のように取り巻いているが、最近はその地層が削られ、意味だけを伝える記号として言葉が使われる傾向が強くなっている」

 旧満州生まれの別役さんは会話も著作も共通語だったが、方言による演劇、表現に強い関心を寄せていた。

 広範により多くの人と意思疎通を図るために記号化された言葉(たとえば共通語)の拡大によって、地域の風土や歴史、人のぬくもりをまとった言葉(たとえば方言)が淘汰(とうた)されていくことに、別役さんは警鐘を鳴らしていたのだと思う。

◆立ち止まって考えよう

 グローバル化の陰で都会と田舎の繋がりが薄れ、共通語に押されて方言が消えていく。

 効率や生産性を「ものさし」として、田舎との繋がりよりもグローバル化を、方言よりも共通語を選択することが「時代の流れ」なのだと、思い込んできたような気がする。本当は二者択一問題ではないのに。

 新型コロナウイルスは、市場原理を共通の価値観とするグローバル社会の脆(もろ)さを炙(あぶ)り出した。それによって止まった人とモノの流れを回復させる過程で、脆さを克服しコロナ以前よりも強く、しなやかな繋がりを構築する必要がある。

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