PR

ニュース コラム

【朝晴れエッセー】コンビニにて・5月22日 

 行きつけのコンビニ。レジには透明なビニールの垂れ幕がある。コロナ対策で今は業種に関係なくどこのレジもそんな感じだ。

 妻の手作りのマスクをした私は、垂れ幕の下のカウンターからいつもの新聞を差し出した。すると同様にマスクをした中年の女性店員が、指で端をつまんでスッと引き寄せた。

 その瞬間、「それじゃ失礼だろ!」と私は声を上げた。まるで新聞に菌でも付いているかのような所作に見えたのだ。

 女性は初めきょとんとしていたが、私の目を見て「あ…すみません」と頭をさげた。金を払い憮然(ぶぜん)として店を出た私。家に帰って妻にその話をすると、「店員さんかわいそう」「いや、こんなときだから…」「違うわよ。いつものクレーマーじゃないの。ひどい人ね」。いつになく冷たい言い方をされ、私は黙った。

 思い返すと些末(さまつ)なことでいちいち腹を立て、店員や受付の人に乱暴な言葉を投げつけている自分がいた。どうしてそうなってしまったのか、特に退職後に。つまりコロナは関係ないのだ。その夜、頭を冷やして考えた。

 次の日、またコンビニへ出かけた。あの女性店員がいた。新聞を持って近づくと目にさっと緊張が走った。「いらっしゃいませ」と小さな声で新聞を引き寄せる。今日は両手を添えた。「昨日は、どうも…」。私にはそれが精一杯だった。

 女性はさっきの目をパチクリさせ、「いいえ、毎度ありがとうございます」と明るく返してくれた。トレーに120円を置いて私は店を後にした。

 工藤俊逸 67 青森市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ