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【風を読む】中国をけしからんと言うのなら 論説副委員長・榊原智

河野太郎防衛相(春名中撮影)
河野太郎防衛相(春名中撮影)

 金持ちになったからといってすぐれた人格になるわけではない。それどころかゆがんだ優越感を持ち、他者の危難に乗じて道義に外れた振る舞いに及ぶ人はいる。国家でも同じであろう。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、中国が東シナ海や南シナ海で平然として行う挑発をみて、つくづくそう思う。

 8日夕、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に侵入してきた中国海警局の公船が、魚釣島の西南西約12キロの海上で日本漁船を追いかけた。海上保安庁の巡視船が漁船を守り、中国公船に領海から出るよう警告した。

 中国海警局は軍の最高指導機関「中央軍事委員会」の傘下にある。それがわが物顔で横行し、日本国民の意識を麻痺(まひ)させようとしている。日本が気を緩めれば漁民に偽装した海上民兵などが上陸してきかねない。南シナ海で島や岩礁を奪っていった手口である。

 外務省のアジア大洋州局長や北京の日本大使館は8日、中国側に抗議した。だが、中国公船はその後も領海侵入を重ねた。外務省の抗議に何の痛痒(つうよう)も感じないらしい。

 ひと月ほど前のことだが、河野太郎防衛相が都内で講演し、ウイルス禍にもかかわらず軍事的挑発を続ける中国について「極めてけしからんと思っている」と批判した。安倍晋三首相は平成30年1月に国会で、尖閣防衛について「安倍政権の決意を見誤るべきではない」と述べたことがある。

 いずれもまっとうな発言だが、それだけでは足りない。相手との「力のバランス」をとる努力が不十分だからだ。日本に一定の質と量を伴った防衛力がなければ、力の信奉者である中国政府にいくら抗議しても伝わらない。

 河野氏は「感染拡大の中でも中国が南西諸島に軍事的な圧力をかけ続けていることを国民はしっかり認識していただきたい」とも語った。

 しっかりしてほしいのは、むしろ安倍政権のほうだ。防衛費は毎年増えているといっても国内総生産(GDP)比1%という低水準で推移しているだけだ。自衛隊は慢性的な予算不足にあえいでいる。中国の火事場泥棒を抑止し、平和を保つには防衛費の思い切った増額が欠かせない。ウイルス禍の中であっても取り組むべき急務である。

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