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【記者発】首相は自分の言葉で語れ 大阪社会部・牛島要平

緊急事態宣言の延長が決まり、国民に対しさらなる協力を呼びかける安倍晋三首相=4日午後、首相官邸(春名中撮影)
緊急事態宣言の延長が決まり、国民に対しさらなる協力を呼びかける安倍晋三首相=4日午後、首相官邸(春名中撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界は「非常時」にある。医療、そして経済が戦後未曽有の危機に直面し、政治家の指導力が日々試されている。そのことをいち早く察知して行動しているのは、国民の一番身近にいる地方自治体の首長ではないだろうか。

 最近、東京都の小池百合子知事、大阪府の吉村洋文知事の姿をテレビでみない日はない。取材を担当する大阪府南部の市町も4月上旬以降、子育て世帯への現金給付や学校給食の無償化、水道料金の減免などを相次いで表明した。本来は議会での補正予算案可決が必要な案件だが、「少しでも早く」と首長の専決処分で実施を急ぐ自治体もある。

 ところが国はどうか。1月中旬に国内で初めて感染者が確認されたが、中国全土からの入国拒否は4月3日。「(4月上旬に予定された)中国の習近平国家主席の国賓来日に配慮し、決断が遅れた」との指摘もある。3月から爆発的に感染が広まった欧米からの入国者への検疫も間に合わず、「第2波」の感染拡大を防げなかった。

 このため「国の対応が後手に回った」と批判され、安倍晋三首相が記者会見する姿も、どこか精彩を欠いているようにみえる。事業者への休業要請や外出自粛を段階的に解除する独自基準「大阪モデル」を策定した吉村知事の仕事ぶりとは対照的だ。

 議院内閣制で与党や省庁が後ろに控える国政と、直接選挙制で首長に強い権限がある地方行政を同列に論じることはできないが、現在の国・地方の状況は幕末の徳川幕府と雄藩の対立構図に重なる。

 幕府はペリー来航以降、外国からの開国要求と国内の尊王攘夷運動の間で右往左往し、薩摩藩が混乱に乗じて幕政に介入。幕府にも有能な官僚はいたが、硬直化した組織が情勢への機動的な対応を妨げた。優秀な人材を身分にとらわれず登用した薩摩藩、長州藩に政局の主導権を奪われ、幕府は瓦解(がかい)した。

 現在、私たちが政権を変えるには選挙しか手段がない。何より問われているのは、非常時における民主主義の価値である。リーダーと国民が信頼関係で結ばれるには、真剣で透明な議論こそ必要ではないか。安倍首相はまず、「自分の言葉」で国民に語りかけてほしい。

【プロフィル】牛島要平

 平成12年入社。大阪経済部、神戸総局などを経て、27年5月から経済部でゲーム業界や財界などを担当。昨年5月から社会部関西空港支局長。

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