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【風を読む】こどもの日に思う教師の力 論説副委員長・沢辺隆雄

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、休校となった無人の教室=3月12日午後、大阪市大正区の泉尾北小学校(薩摩嘉克撮影)
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、休校となった無人の教室=3月12日午後、大阪市大正区の泉尾北小学校(薩摩嘉克撮影)

 昭和の初めから教壇に立ち、戦後にわたり活躍した伝説の国語教師がいる。大村はまさん。その講演をまとめた『新編 教えるということ』(ちくま学芸文庫)を連休に読み返してみた。その中に戦後まもない昭和22年に創設された新制中学の教師に転身したころのエピソードが語られている。

 東京・下町にはまだ焼け野原が広がり、教室は焼け残った工業学校の一部を借りていた。教室も足りず2クラス100人を一緒にみるよう言われたが、学校に慣れない子供たちは大騒ぎ。一斉授業などできる状態ではなかった。当時すでに20年の教師経験があった大村さんも立ち尽くしたという。

 大村さんは自分が持っていた新聞や雑誌などを引っ張り出し、問題を付け100通りの教材をつくった。子供を一人ずつ捕まえては「こんなふうにやってごらん」と教材を渡した。すると食いつくように、勉強を始めたという。子供たちは何かを求め、伸びたいと思っている。何の対策もなく「静かにしなさい」というのは、教師の禁句だと大村さんは説く。ほかにも教師が教えているようで、実は「教えていない」例を挙げている。

 新型コロナウイルス感染拡大で学校の休校が長期化している。戦中、終戦直後の昔はもっと大変だったというのではない。危機のなかでこそ、まだまだやることが多く、教師の力の奮(ふる)いどころではないか。文部科学省や教育委員会はそれを促し、支援する施策にさらに知恵を絞るときだ。

 オンライン授業といっても、小中高校などでは双方向で上手にやっているところは限られる。休校中に登校日を設けはしても、子供たちはプリントをどっさりもらって帰るだけで、うんざりしている例もあるようだ。

 本紙の教育コラム「解答乱麻」の筆者だった元教育委員で開善塾教育相談研究所長の藤崎育子さんは、休校により「『学校は大切』だと再認識されはじめたのに、何もやっていない印象を持たれるのは残念なこと。子供たちが家でどう過ごしているか、想像力を働かせ、どう子供たちにかかわっていくか、真剣に考えてほしい」と話す。教師も不安の中で難しいことだが、教師の一言が子供たちを勇気づけることもある。考えてもらいたいことだ。

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