PR

ニュース コラム

【世界の論点】覇権拡大進める中国

南シナ海に展開した中国人民解放軍の軍艦で演説する習近平国家主席(左)=2018年(AP)
南シナ海に展開した中国人民解放軍の軍艦で演説する習近平国家主席(左)=2018年(AP)

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で各国政府が感染者の治療や防疫、経済対策などに追われる中、中国共産党政権が覇権拡大を進めている。習近平国家主席率いる同政権は、大規模な民主化デモが起きた香港で民主派への締め付けを本格化させ、南シナ海では領有権を争う周辺国に対して高圧的な態度で海洋進出を強行し続けている。新型コロナの状況に付け入ろうとする中国の動きに懸念が高まっている。

香港 立法会選に備え主導権掌握

 中国の習近平政権は、林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官率いる香港政府を通じて、香港情勢へのテコ入れを本格化させている。

 まずは4月18日、香港警察が民主派の李柱銘・元民主党主席ら15人を一斉に逮捕。19日には、香港政府が基本法(ミニ憲法)の解釈を変更し、中国当局による香港への介入を容認した。

 これに対し、香港紙、蘋果日報は20日付紙面で、「当局はなぜ、社会が防疫で団結する必要がある今、手を出すのか」と中国側を激しく非難する社説を掲載した。

 1997年の香港返還後、中国資本による香港メディアへの買収工作が進んだ結果、現在、香港の有力紙で中国共産党批判の論陣を張るのは同紙だけだ。逮捕された15人の中に、同紙の創業者で実業家の黎智英氏も含まれている。

 同紙はこの社説で、「なぜ今なのか」について、「香港では防疫の一環で5人以上の集会が禁止されている」ことを挙げ、今なら大量逮捕に踏み切っても「抗議活動に多くの市民が集まることを心配する必要がない」と指摘する。

 さらに、新型コロナウイルスを「武漢肺炎」と表記する同紙は、「武漢肺炎の防疫に忙しい欧米から大きな反発が起きることを心配する必要もないからだ」と喝破する。

 中国・香港当局の狙いは何か。蘋果日報は同社説で、「香港の政治の主導権を掌握」し、「9月の立法会選に備えることだ」とみる。当局はドサクサに紛れて「政府と警察の権力を大幅に拡大」しており、一連の措置は「民主派勢力や、民主化を要求する香港人」に対する「開戦」を意味する-と同紙は警戒感をあらわにするのだ。

 香港紙の中で中国の主張を代弁することで知られるのが、左派系の文匯報である。同紙は19日付社説で、「黎智英、李柱銘ら香港を乱す黒幕」を逮捕し、政治的な不安定要因を取り除くことでようやく「防疫に集中できる」と一斉逮捕を正当化した。

 同紙は18日付社説でも、「中国政府は香港に対する全面的な管轄権をもっている」と強調。中国当局による香港への介入が問題なのではなく、「外国勢力が香港に介入し、一国二制度を破壊すること」が問題なのだとした。

 一方の蘋果日報は20日付社説で、「北京と林鄭政府は、民主を勝ち取ろうという市民の決意を過小評価している」と指摘。当局がいかなる弾圧を加えようとも、「市民の決意と自信を変えるのは不可能だ」と断言するのである。

 蘋果日報と文匯報の主張の違いは、民主派と親中派が激しく対立する香港の現状をそのまま表している。(香港 藤本欣也)

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ