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【直球&曲球】春風亭一之輔 「業」というのは恐ろしい

 非常時に落語は弱い。「楽して儲(もう)けたい」「酒をあびるほど飲みたい」「働かずに生きていきたい」。落語の主人公ってそんなフシダラなことばかり考えていて、周りの人は頭を抱えながらも何となくそれを許している。

 それを聴いてお客は「ったく、しょうがねぇな」と、でもちょっと羨(うらや)ましくも感じながら「アハハ」と笑う。人間てそんなもんだよな、と『ダメな人間』も認めるのが落語。故立川談志師匠はそれを「人間の業(ごう)の肯定」とした。

 でも、それが笑えるのも平和なとき。世の中がすっちゃかめっちゃかになると現実社会に『人間の業』が溢(あふ)れすぎてもう処理不能です。落語家の手に負えないよ。

 買い占めはダメだとわかってても「みんなしてるし、うちがちょっと多く買ったって構わないだろう」とか。外出自粛といわれても「あっちの県だったら、まだ感染者が出てないから避難がてら遊びに行こう」とか。県外から来たナンバーを見たら「十円玉でキズでもつけて懲らしめてやろう」とか。

 密はダメなのは承知の上で「べつにオレが罹(かか)ったって自己責任だし、やる事(こと)もないから空(す)いてるならパチンコでもしよう」とか。言っても開けてるパチンコ屋の名前を公表したら「見せしめになってみんな閉めるだろう」とか。

 どうやら開いてるらしいから「あのパチンコ屋に行こうか」とか。国民一律10万出るなら「年寄りを騙(だま)して巻き上げてやろう」とか。あの辺の地域から感染者が出たみたいだから「なるべく近寄るのはよしましょう。知らない皆さんにもその情報を拡散してあげましょう」とか。

 「補償補償」とうるさいから「マスクの2枚も配って黙らせてやろう」とか。有名人がコロナで亡くなったら「3密上等で取材に行ってみよう」とか。

 もうちょっと世の中笑えなくなってきた。私も落語やる場所もないので「YouTubeで落語を生配信しよう」とか、思って始めてみました。まぁ『落語家の業』だと思って聴いてみてください。『業』というものは恐ろしいものです。

                   ◇

【プロフィル】春風亭一之輔

 しゅんぷうてい・いちのすけ 落語家。昭和53年、千葉県生まれ。日大芸術学部卒。平成13年、春風亭一朝に入門して朝左久、二つ目昇進時に一之輔を名乗る。24年、21人抜きで真打ちに抜擢(ばってき)。古典落語の滑稽噺を中心に、人情噺、新作など持ちネタは200以上。

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