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【風を読む】けちけちするなよ 論説副委員長・別府育郎

 日本サッカー協会の川淵三郎キャプテン(日本トップリーグ連携機構会長)が自身のツイッターに、こう記していた。「Jリーグスタート時はチアホーンが全会場で普及して応援の行き帰りでも吹き鳴らされていた。スタジアム近隣の住民から苦情が来て試合前の大型スクリーンで自粛を要請した。次節、全くチアホーンが使用されなくなって驚いた。使用禁止と言ってないのに。日本人は自粛であっても実行できる国民性だ」

 誇っていい日本人の美徳だろう。ただしこれが、国民性だけでなし得た事象だとは思わない。サッカーのプロリーグ創設には、さまざまな困難があった。構想は当初、冷笑に迎えらえた。それでも目標に邁進(まいしん)し開幕にこぎつけた。サポーターのチアホーン自粛は、そうしたリーグに対する敬意と大事に育てたい思いが実現させたといえる。いわば、リーグとサポーターの一体感が生んだ小さな奇跡だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言は、他国と違い、強制力は伴わない。それでも多くの国民が自らに我慢を強いており、確かに都心の繁華街からは人の波が消えた。

 だが目標の「最低7割、極力8割減の接触制限」にはほど遠い。各人が心に抱く不安は大きいままだ。政府の対策が逐次的に揺れ動き続けるためでもある。緊急事態宣言の対象は7都府県から全国に拡大された。国民への給付は収入が減った低所得世帯への30万円から各人への10万円に変更された。

 事態は動いており臨機応変は当然だが、その都度、閣内や官僚からけち臭い異論が漏れ、野党からは声高ないちゃもんばかりが聞かれる。これでは国民との一体感は生まれにくい。

 川淵さんには昨年、令和への御代替わりに際し、文芸批評家、新保祐司さんとの対談をお願いした。その席で川淵さんは深刻な少子化問題について、こう話した。

 「3番目の子供を産んだら自動的に1千万円を渡す。それなら産むか、となるでしょう。3人目に3万円、5万円とか言っているようでは、何も変わらない」

 額の妥当性はともかく、リーダーには有無を言わさぬ蛮勇が求められることもある。特に、危機に際しては。

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