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【記者発】火事場泥棒にご用心 政治部・田中一世

共産党・小池晃書記局長(春名中撮影)
共産党・小池晃書記局長(春名中撮影)

 「入られた家もあるらしいですよ」。昨年10月、台風19号で洪水に見まわれた栃木県内の住宅街で、避難所から自宅に戻って泥かきをする年配の女性が空き巣被害を心配していた。自然の脅威に襲われて避難し、疲弊しているところに、人間による犯罪にも気が抜けないとは、あまりに気の毒である。

 平成23年の東日本大震災や28年の熊本地震でも火事場泥棒は繰り返されてきた。留守の住宅や商店の金品被害が多数報告されている。古くは江戸時代も、江戸の町で火災に乗じた侵入盗が横行した。

 町奉行は禁止のお触れを再三出している。明暦3(1657)年の大火の後は「夜番を置き、番の者は寝ずに町々を時々巡り、火の用心を触れ回り、少も油断しないこと」と町触が出た(中央防災会議の専門調査会資料より)。

 非常事態につけ入る不届き者は絶えない。火災、自然災害、そして感染症-。今年3月末、オランダの美術館からゴッホの名画が盗まれた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休館中、何者かがガラスドアを壊して押し入ったという。日本でも警察が休業中の店舗や事務所に注意を呼びかけている。

 私の身の回りではそんなことは起きていない。と思いきや、東京・永田町で火事場泥棒騒ぎが起きていた。「新型コロナ対策をめぐる政府の強制力の限界が露見した。憲法を改正して緊急事態条項を設けたらどうか」との提案が自民党内で出ていることを、野党が「究極の火事場泥棒だ」(共産党の小池晃書記局長)と批判している。

 世論調査では緊急事態条項創設に賛成する意見が多数を占める。議論することさえ拒もうとする姿勢には首をかしげる。そもそも、国会議員が用心すべき火事場泥棒は他にいるのではないか。

 今年1~3月の計91日間のうち、83日間にわたり中国の公船が尖閣諸島(沖縄県)周辺の接続水域を航行した。中国機は領空侵犯の恐れがある飛行を繰り返し、自衛隊機は152回も緊急発進した。中国で発生した新型コロナが拡散し、各国が対応に追われる最中のどさくさ紛れの挑発である。国会は「夜番を置き、番の者は寝ずに巡る」のお触れを自衛隊に実践させているだけでいいのだろうか。

                  ◇

【プロフィル】田中一世

 平成16年入社。広島総局、大阪社会部、九州総局などを経て政治部で首相官邸や自民党を取材し、令和元年8月から防衛省を担当。

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