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【記者発】想像することが最初の一歩 大阪社会部・加納裕子

映画「星に語りて」のワンシーン。中央は大前慧さん(C)きょうされん
映画「星に語りて」のワンシーン。中央は大前慧さん(C)きょうされん

 新型コロナウイルスが今ほど猛威を振るっていなかった2月上旬、東日本大震災後の障害者らを描いた映画「星に語りて~Starry Sky~」の上映会を取材した。必要な配慮を受けられず避難所にいられなくなったり、自宅で孤立したり…。そんな苦境が、外部からの救援や地域の助け合いで少しずつ改善に向かうストーリーだ。

 震災から9年となる3月11日を中心に全国の福祉団体が上映会を企画していた。だが取材後、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、ほとんどの上映会が中止になってしまった。

 「障害ゆえの要求が、わがままとみなされる」「こんな非常時だから我慢しろという雰囲気」。映画で語られていたセリフが耳に残る。これは果たして、過去の出来事だろうか。不要不急の外出自粛が要請され、緊急事態宣言も発令された。先行きの見えない不安が社会を覆う今、まさに映画が描いた震災後のような苦境に陥っている人がいるのではないだろうか。

 富山県の病院では患者への面会が一律に禁止され、骨折して入院中の認知症の女性(70)は家族と面会できなくなった。その後、女性は新型コロナウイルスではない感染症で、一時危篤になったという。女性は認知症のために自分で不調を訴えられなかった。これまで毎日一緒に過ごし、女性の変化に敏感な家族の面会は、生きるために不可欠な支援だったのだ。

 面会禁止だけでなく、施設閉鎖や外出自粛の陰で、必要な支援を受けられなくなった人がいる。どんな障害があるかや、その程度によって、些細(ささい)なことともとられるような支援が、その人の生命線だったりする。勝手に他者が判断することは非常に危険だ。

 今、滅菌ガーゼが病気やけが治療が必要な人の手に入らなくなっており、「マスクを作るために滅菌ガーゼは使わないで」という呼びかけがされている。緊急事態宣言で、多くのものを備蓄したくなるが、自分が買い置きした何かが売り場からなくなることで、命の危険にさらされる人はいないだろうか。

 今、自分はどう行動すべきか。目に見える支援だけでなく、想像力を巡らせることが、支援の第一歩なのではないだろうか。

                  ◇

【プロフィル】加納裕子

 平成11年入社。和歌山支局、大阪整理部、大阪文化部などを経て、令和元年5月から大阪社会部。教育関連の取材などを担当している。

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