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【台湾有情】近代史の味

26日、台湾・台北の夜市場をマスク姿で歩く人々(AP)
26日、台湾・台北の夜市場をマスク姿で歩く人々(AP)

 6年近く過ごした台北を離れることになり、知人が「眷村(けんそん)料理」をごちそうしてくれた。眷村は、国共内戦に敗れ1949年に台湾に逃れてきた中国大陸出身の「外省人」の集落で、主に軍人とその家族が暮らした。日本人が戦後残した家屋に入ったのは良い方で、急ごしらえの簡素な建物が各地に残る。それがかえって味があると、一部はカフェなどに改修されている。

 外省人というと独裁政権下で私腹を肥やしたような図で描かれることが多いが、眷村の軍人は貧しく、肉団子に豆腐を練りこむなど知恵を絞って出身地の料理を作り、近所と交換したという。台湾料理に多い香辛料「八角」を使わず、酒に合うよう「濃いめ」の味も日本人にはちょうどよい。有名な「牛肉麺」も四川出身者の考案とされる。台湾の食の豊かさの一端は外省人の味に由来する。ただ、別の知人によると「今の台湾で外省人の肩身は狭い」という。

 民主化から20年以上を経た台湾だが、独裁政権下の人権侵害は現在進行中の政治課題だ。1月の総統選まで吹きあれた「韓国瑜ブーム」は、「台湾人意識」の高まりを受けた、少数者の外省人の反動でもあったろう。台湾の近代史はとても複雑で、多くの涙を含んでもいる。そんなことを考えながら、塩気の効いた煮込み肉をかみしめた。(田中靖人)

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